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ALS/FTD遺伝子C9ORF72に関連するポリGRリピートはニューロンにおいて翻訳伸長を阻害しリボ毒性ストレス反応を誘導する

Poly-GR repeats associated with ALS/FTD gene C9ORF72 impair translation elongation and induce a ribotoxic stress response in neurons

Research Article

SCIENCE SIGNALING
6 Aug 2024 Vol 17, Issue 848
[DOI: 10.1126/scisignal.adl1030]

Daoyuan Dong1, 2, Zhe Zhang1, 2, Yini Li1, 2, Malgorzata J. Latallo3, 4, †, Shaopeng Wang1, 2, 3, Blake Nelson3, 4, Rong Wu1, 2, Gopinath Krishnan5, Fen-Biao Gao5, 6, Bin Wu3, 4, 7, Shuying Sun1, 2, 4, 7, 8, *

  1. 1 Department of Physiology, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  2. 2 Brain Science Institute, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  3. 3 Department of Biophysics and Biophysical Chemistry, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  4. 4 Center for Cell Dynamics, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  5. 5 RNA Therapeutics Institute, University of Massachusetts Chan Medical School, Worcester, MA 01605, USA.
  6. 6 Department of Neurology, University of Massachusetts Chan Medical School, Worcester, MA 01605, USA.
  7. 7 Solomon H. Snyder Department of Neuroscience, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  8. 8 Department of Pathology, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
  9. * Corresponding author. Email: shuying.sun@jhmi.edu
  10. Present address: Vertex Pharmaceuticals, Boston, MA 02210, USA.

Editor's summary

C9ORF72遺伝子の反復伸長は、神経変性疾患であるALSや前頭側頭型認知症の原因となることが多い。患者由来のニューロンを用いて、Dongらは、変異C9ORF72 RNAがコードするグリシン-アルギニン(ポリGR)の反復が翻訳装置を停滞させ、リボソームの衝突を引き起こすことを発見した。結果として生じるリボ毒性ストレス応答がニューロン死を誘発した。キナーゼZAKαまたはp38 MAPKを阻害してこの応答を遮断すると、培養中の患者由来ニューロンの生存率が向上した。このアプローチは、患者のニューロンを保存する治療の可能性を秘めている。—Leslie K. Ferrarelli

要約

C9ORF72遺伝子の6塩基反復伸長は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の最も頻度の高い遺伝的原因である。伸長の結果、複数のジペプチド反復タンパク質が生成されるが、そのうちアルギニンに富むポリGRタンパク質はニューロンに対して強い毒性を示し、タンパク質合成速度を低下させる。われわれは、タンパク質合成に及ぼす影響がニューロンの機能不全や変性に寄与するかを調べた。ポリGRタンパク質の発現は、翻訳伸長を乱すことにより全体的な翻訳を阻害することを発見した。iPSC分化ニューロンでは、比較的伸長速度が遅い転写産物の翻訳は、ポリGRによってさらに遅くなり、停滞した。伸長の停滞はリボソーム衝突を増加させ、ZAKαによって媒介されるリボ毒性ストレス応答(RSR)を誘発し、キナーゼp38のリン酸化を増加させ細胞死を促進した。ZAKαのノックダウンまたはp38の薬理学的阻害により、ポリGR誘発毒性が緩和され、C9ORF72-ALS/FTD患者のiPSC由来ニューロンの生存率が向上した。われわれの知見は、RSRを標的とすることが、C9ORF72の反復伸長によって引き起こされるALS/FTD患者における神経保護効果をもたらす可能性があることを示唆している。

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