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側脳室の休止神経幹細胞の皮質回路による活性化の根底にあるコリン作動性シグナル伝達経路

A cholinergic signaling pathway underlying cortical circuit activation of quiescent neural stem cells in the lateral ventricle

Research Article

SCIENCE SIGNALING
24 Sep 2024 Vol 17, Issue 855
[DOI: 10.1126/scisignal.adk8810]

Moawiah M. Naffaa1, 2, * and Henry H. Yin1, 3, *

  1. 1 Department of Psychology and Neuroscience, Duke University, Durham, NC 27710, USA.
  2. 2 Department of Cell Biology, Duke University, School of Medicine, Durham, NC 27710, USA.
  3. 3 Department of Neurobiology, Duke University School of Medicine, Durham, NC 27710, USA.
  4. * Corresponding author. Email: moawiah.naffaa@duke.edu (M.M.N.); hy43@duke.edu (H.H.Y.)

Editor's summary

側脳室の神経幹細胞は、出生後も増殖能を保持し、嗅球に新たなニューロンを生じさせる。NaffaaとYinは、これらの神経幹細胞の近隣に位置するコリン作動性ニューロンの活性を神経幹細胞の増殖と関連づけるシグナル伝達カスケードを明らかにした。コリン作動性ニューロンの活性化は、休止神経幹細胞のムスカリンM3受容体を刺激し、細胞内Ca2+量の増加を仲介するタンパク質とCa2+に応答するタンパク質の活性化を引き起こした。これらの結果は、側脳室の休止状態にある神経幹細胞が活性化されて増殖が誘導される仕組みを明らかにするものであり、この過程は嗅覚処理と学習に関与している可能性がある。—Wei Wong

要約

哺乳類脳の側脳室(LV)に沿って位置する脳室下帯(SVZ)の神経幹細胞(NSC)は、出生後から成人期まで、自己再生して新たなニューロンを産生し続ける。LVの内側を覆う上衣細胞の近くに位置する休止状態のLV細胞は、SVZの上衣下(subep)領域内のコリンアセチルトランスフェラーゼ陽性(ChAT+)ニューロンが前帯状皮質(ACC)からの投射によって刺激されたときに、これらのニューロンによって活性化される。本稿でわれわれは、SVZの腹側領域に特異的に存在する休止期LV NSCの活性化と増殖を担う、ACC-subep-ChAT+回路によって活性化されるシグナル伝達経路を明らかにした。この回路は、休止状態にあるLV NSCのムスカリンM3受容体を活性化し、それによってイノシトール1,4,5-三リン酸受容体1型(IP3R1)に仲介されるシグナル伝達を誘導した。細胞内Ca2+量を増加させると予測されるIP3R1活性化の下流では、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII δおよびMAPK10シグナル伝達経路が刺激され、これらはSVZの休止状態にあるLV NSCの増殖に必要だった。これらの知見は、休止期にあるLV NSCを調節する機構を明らかにし、腹側SVZ内での増殖活性を亢進するうえでACCからの投射が担うきわめて重要な役割を強調するものである。

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