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mTORC1シグナル伝達とリボソーム生合成の相互調節が活性化T細胞における細胞周期進行を決定する

Reciprocal regulation of mTORC1 signaling and ribosomal biosynthesis determines cell cycle progression in activated T cells

Research Article

SCIENCE SIGNALING
22 Oct 2024 Vol 17, Issue 859
[DOI: 10.1126/scisignal.adi8753]

Teresa Rosenlehner1, †, ‡, Stefanie Pennavaria1, †, ‡, Batuhan Akçabozan1, Shiva Jahani1, Thomas J. O'Neill2, Daniel Krappmann2, Tobias Straub3, Jan Kranich1, Reinhard Obst1, *

  1. 1 Institute for Immunology, Biomedical Center, Medical Faculty, Ludwig-Maximilians-Universität München, 82152 Planegg-Martinsried, Germany.
  2. 2 Research Unit Signaling and Translation, Helmholtz Zentrum München, 85764 Neuherberg, Germany.
  3. 3 Bioinformatics Core Facility, Biomedical Center, Medical Faculty, Ludwig-Maximilians-Universität München, 82152 Planegg-Martinsried, Germany.
  4. * Corresponding author. Email: reinhard. obst@med.uni-muenchen.de
  5. Present address: Bavarian Nordic, 82152 Planegg-Martinsried, Germany.
  6. These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

活性化T細胞は、増殖に必要なタンパク質合成を支持するために、核小体におけるリボソーム生合成を増やさなければならない。Rosenlehnerらは、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達、リボソーム生合成、そして細胞の成長と増殖に関与する多タンパク質複合体であるmTORC1の間の相互作用を調べた。mTORC1は増殖中の活性化T細胞の速い細胞周期に必要であった。さらに、mTORC1はTCRの抗原感受性を高め、リボソームRNA合成を促進し、核小体の数と大きさを増やした。これらの作用は、関連するmTORC2複合体では認められなかった。また、mTORC1の活性は、TCRの活性およびRNAポリメラーゼIによって仲介されるリボソームRNA転写の活性と相関した。これらの結果は、活性化T細胞の増殖を可能にする、シグナル伝達経路と細胞過程の相互調節を明らかにしている。—Wei Wong

要約

核小体におけるリボソーム生合成は、すべてのRNAポリメラーゼと数百の補助タンパク質によって駆動される、エネルギーを要求する過程である。われわれは、活性化Tリンパ球において、T細胞受容体(TCR)シグナルや多タンパク質複合体mTORC1およびmTORC2(いずれもキナーゼmTORを含有)によってこの過程が調節される機構を調べた。mTORC1が欠損するとT細胞の増殖が遅延し、各分裂が進むごとにさらに遅延したが、mTORC2の欠損ではそのような影響は認められなかった。mTORC1シグナル伝達は、従来のTCRシグナル伝達の構成要素によって刺激され、相反的に、mTORC1阻害によりTCRの感受性が低下した。TCR活性化によって誘導される、細胞あたりのRNA量の大幅な増加が、mTORC1の欠損により50%抑制されたが、mTORC2の欠損、またはmTORC1の下流で活性化されるS6キナーゼ1および2の欠損では、そのような抑制は認められなかった。RNA-seqデータから、mTORC1欠損によりすべてのRNAバイオタイプの存在量が減少するが、活性化T細胞においてrRNAプロセシングは大部分が正常であることが示された。新生リボソームRNA前駆体のFISHプローブを用いたイメージングサイトメトリーでは、mTORC1の欠失により、転写が活発に行われる核小体部位の数と拡張が減少するが、mTORC2の欠失ではそのような減少は認められないことが明らかになった。その結果として、mTORC1の非存在下ではタンパク質翻訳が50%減少した。RNAポリメラーゼIを阻害すると、増殖だけでなく、mTORC1シグナル伝達も阻害された。われわれのデータは、クローン性に増殖するT細胞におけるバイオマス産生中に、TCRシグナル伝達、mTORC1活性および核小体でのリボソーム生合成が相互に調節し合うことを示している。

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