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マウスでは胃のグレリン産生細胞におけるピエゾ1(Piezo1)による機械的感知が、肝臓の脂質恒常性に寄与している

Mechanosensing by Piezo1 in gastric ghrelin cells contributes to hepatic lipid homeostasis in mice

Research Article

SCIENCE SIGNALING
22 Oct 2024 Vol 17, Issue 859
[DOI: 10.1126/scisignal.adq9463]

Jinshan Zhang1, 2, Yawen Zhao1, Shaohong Wu1, Mengxue Han1, Luyang Gao1, Ke Yang1, Hui Chen3, Cunchuan Wang2, *, Geyang Xu1, 4, *

  1. 1 Department of Physiology, School of Medicine, Jinan University, 601 Huangpu Avenue West, Tianhe District, Guangzhou, Guangdong 510632, China.
  2. 2 Department of Metabolic and Bariatric Surgery, First Affiliated Hospital of Jinan University, 613 Huangpu Avenue West, Tianhe District, Guangzhou, Guangdong 510630, China.
  3. 3 Biotherapy Center; Cell-gene Therapy Translational Medicine Research Center, Third Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University, Guangzhou 510630, China.
  4. 4 Key Laboratory of Viral Pathogenesis & Infection Prevention and Control (Jinan University), Ministry of Education, 510632 Guangzhou, Guangdong, China.
  5. * Corresponding author. Email: xugeyangliang@163.com (G.X.); twcc@jnu.edu.cn (C.W.)

Editor's summary

食欲刺激ホルモンであるグレリンは肝臓への脂質蓄積を促進している。Zhangらは、食物摂取による胃の伸展時に活性化されてグレリンの産生を抑制する機械刺激感受性イオンチャネル「Piezo1」による、肝臓の脂質恒常性の調節を検討した。胃グレリン産生細胞でPiezo1を欠損しているマウスは脂肪肝を発症したが、これはグレリン受容体の薬理学的阻害により回復した。食物摂取により誘発される機械的伸展を模倣して胃にビーズを埋め込んだとき、通常食を給餌された対照マウスまたは食事誘発性肥満マウスでは脂肪肝が軽減したが、コンディショナルノックアウトマウスでは軽減しなかった。このようにグレリン産生細胞のPiezo1は、世界で最も多くみられる肝機能障害である代謝障害関連脂肪性肝疾患の、治療標的となるかもしれない。—Wei Wong

要約

グレリンは、胃のグレリン産生細胞により放出される摂食亢進作用をもつペプチドであり、肥満と脂肪肝の一因となっている。グレリン産生細胞の機械刺激感受性イオンチャネルであるPiezo1は、胃の機械的伸展に応答してグレリンの合成と分泌を阻害する。われわれは、胃グレリン産生細胞のPiezo1を操作することで、肝臓の脂質代謝を調節することに取り組んだ。グレリン産生細胞特異的なPiezo1欠損を有するマウス(Ghrl-Piezo1−/−マウス)に低脂肪または高脂肪食を給餌したとき、高グレリン血症および脂肪肝を呈した。これらのマウスにおける肝臓への脂質蓄積は、肝臓の脂肪酸合成の増加と脂質β-酸化の減少をもたらすと予想される遺伝子発現およびタンパク質の存在量および活性の変化を伴っていた。Ghrl-Piezo1−/−マウスにおけるグレリン受容体の薬理学的阻害により脂肪肝が改善したことから、これらのマウスで認められた表現型は、Piezo1の不活性化に起因するグレリンの過剰産生によるものであったことが確認された。胃の機械的伸長を誘導するため胃にシリコンビーズを埋め込むことでグレリンの合成と分泌が抑制され、野生型マウスではこれが、高脂肪食により誘導される脂肪肝の発現の抑制に役立ったが、Ghrl-Piezo1−/−マウスでは抑制されなかった。今回の研究から、胃グレリン産生細胞のPiezo1による肝臓への脂質蓄積の制御機構が解明され、脂肪肝の治療候補に関する洞察が得られた。

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