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HIV-1のVpuおよびSARS-CoV-2のORF3aタンパク質が、STINGを介した抗ウイルスNF-κBシグナル伝達の活性化を阻害する

HIV-1 Vpu and SARS-CoV-2 ORF3a proteins disrupt STING-mediated activation of antiviral NF-κB signaling

Research Article

SCIENCE SIGNALING
21 Jan 2025 Vol 18, Issue 870
DOI: 10.1126/scisignal.add6593

Yajuan Rui1, 2, †, Si Shen1, 3, †, Yanpu Wang1, 2, †, Leyi Cheng1, Shiqi Chen1, Ying Hu1, Yong Cai4, Wei Wei5, *, Jiaming Su1, 2, *, Xiao-Fang Yu1, 2, *

  1. 1 Cancer Institute (Key Laboratory of Cancer Prevention and Intervention, China National Ministry of Education), Second Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, Zhejiang 310000, China.
  2. 2 Cancer Center of Zhejiang University, Hangzhou, Zhejiang 310000, China.
  3. 3 Department of Respiratory Disease, Thoracic Disease Center, First Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, Zhejiang 310003, China.
  4. 4 School of Life Science, Jilin University, Changchun 130012, China.
  5. 5 Key Laboratory of Organ Regeneration and Transplantation of Ministry of Education, Institute of Translational Medicine and Institute of Virology and AIDS Research, First Hospital, Jilin University, Changchun, Jilin 130021, China.
  6. * Corresponding author. Email: xfyu1@zju.edu.cn (X.-F. Y.); 0617025@zju.edu.cn (J.S.); wwei6@jlu.edu.cn (W.W.)
  7. † These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化によって誘導されるインターフェロンのシグナル伝達は、細胞の抗ウイルス武器庫の中でも強力な武器である。STINGはインターフェロンのシグナル伝達を刺激することに加え、転写因子核因子κB(NF-κB)も活性化する。Ruiらは、培養細胞においてSTINGを介したNF-κBの活性化が、インターフェロンの誘導とは独立して、DNAおよびRNAウイルスの複製を阻害することを見いだした。HIV-1およびSARS-CoV-2由来の関連のない2つのタンパク質が、STINGによるNF-κBの活性化を選択的に阻害し、ウイルス複製を促進した。これらの知見は、STING依存的なNF-κB活性化が細胞において広範な抗ウイルス機能を果たしていること、しかもウイルスはこれを阻害するための機構を進化させていることを示している。—Annalisa M. VanHook

要約

細胞質DNAによるインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化によって、転写因子であるインターフェロン調節因子3(IRF3)および核因子κB(NF-κB)の活性化が生じる。多くのウイルスが、IRF3依存性の抗ウイルス応答を阻害するタンパク質を産生しているが、一部のウイルスは、IRF3の活性化を阻害することなくSTING誘導性NF-κB活性化を阻害するタンパク質を産生している。本稿でわれわれは、STINGにより活性化されNF-κB依存性だが、IRF3には依存しない自然免疫が、DNAウイルスである単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、RNAウイルスであるコクサッキーウイルスA16(CV-A16)、およびレトロウイルスであるHIV-1の複製を阻害することを見いだした。HIV-1の非構造タンパク質であるVpuはSTINGと結合し、STINGが上流にあるNF-κB経路キナーゼinhibitor of NF-κB subunit β(IKKβ)と相互作用することを阻止し、それによりNF-κBシグナル伝達を阻害した。こうしたVpuの機能は、多様なHIV-1およびサル免疫不全ウイルス株由来のVpuタンパク質間で保存されており、これは他宿主での抗ウイルス経路の阻害におけるその作用とは異なっていた。さらに、コロナウイルスSARS-CoV-2由来のORF3aタンパク質も、STINGとの相互作用とSTING誘導性のNF-κB活性化の阻害によりウイルス複製を促進したが、IRF3誘導性のNF-κB活性化は阻害しなかった。これらの知見は、多様なウイルスタンパク質が収斂進化して、STING活性化の下流に位置するNF-κBを介した自然免疫を選択的に阻害するようになったことを示し、この経路を標的とすることが将来有望な抗ウイルス戦略である可能性を示唆している

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