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ビオチンがショウジョウバエ(Drosophila)およびヒトニューロンのマンガン誘発性パーキンソン病関連神経毒性を軽減する

Biotin mitigates the development of manganese-induced, Parkinson’s disease—related neurotoxicity in Drosophila and human neurons

Research Article

SCIENCE SIGNALING
21 Jan 2025 Vol 18, Issue 870
DOI: 10.1126/scisignal.adn9868

Yunjia Lai1, Pablo Reina-Gonzalez2, Gali Maor3, Gary W. Miller1, *, Souvarish Sarkar2, 3, *

  1. 1 Department of Environmental Health Sciences, Mailman School of Public Health, Columbia University, New York, NY 10032, USA.
  2. 2 Department of Environmental Medicine, University of Rochester School of Medicine and Dentistry, Rochester, NY 14642, USA.
  3. 3 Department of Pathology, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
  4. * Corresponding author. Email: gm2815@cumc.columbia.edu (G.W.M.); souvarish_sarkar@urmc.rochester.edu (S.S.)

Editor's summary

マンガンは多様な細胞機能に必要不可欠だが、慢性曝露はパーキンソン病に似た症状を伴う神経変性状態を引き起こす。Laiらは、マンガン誘発性パーキンソニズムの成虫ハエモデルを開発し、ビオチン(別名ビタミンB7)の代謝変化がマンガンの神経毒性を仲介することを明らかにした。マンガン曝露は生体利用可能な「遊離」ビオチンの量を減少させ、結果的にニューロン喪失と脳内のミトコンドリアおよびリソソーム機能異常を引き起こし、運動機能を損なわせた。マンガン曝露と並行してハエの食餌にビオチンを補充すると、これらの作用は妨げられた。このような細胞への影響は、培養ヒトドーパミン作動性ニューロンで再現された。これらの知見は、ビオチン補充がリスク患者への予防的介入になりうることを示している。—Leslie K. Ferrarelli

要約

マンガン(Mn)への慢性曝露は、マンガン中毒を引き起こし、またパーキンソン病(PD)に関与する環境因子としても広く関連づけられている。マンガン中毒とPDには運動症状と臨床的特徴に顕著な重複が際立つ。本稿でわれわれは、行動の欠損、ニューロンの喪失、リソソームおよびミトコンドリアの機能異常など、パーキンソン病の主な特徴を再現した成虫ショウジョウバエ(Drosophila)のMn毒性モデルを開発した。毒性の初期段階にあるこれらのハエの脳組織および体組織の代謝解析によって、Mn処置群におけるビオチン(別名ビタミンB7)代謝の全身性変化が同定された。ビオチニダーゼ欠損ハエでは、Mn誘発性神経毒性、パーキンソニズム、ミトコンドリア機能異常が増悪していた。野生型ハエの食餌にビオチンを補充すると、Mnの同時曝露による病理学的表現型が改善した。また、ビオチン補充は3つの標準的なハエPDモデルの病理学的表現型も改善させた。さらに、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から分化した中脳ドーパミン作動性ニューロンの培養液にビオチンを補充すると、Mn誘発性のミトコンドリア調節不全、細胞傷害性、ニューロン喪失から保護された。最後に、PD患者のビオチン関連タンパク質をコードする遺伝子の発現解析では、健康な対照者と比べて黒質内のビオチン輸送体量が増加していることが明らかになったことから、PDにビオチン代謝の変化が関与している可能性が示唆された。まとめると、これらの知見は、ハエにおけるMn神経毒性とパーキンソニズムの根底にある病理としてビオチン代謝の変化を同定し、ビオチン補充がその予防的介入になることを示した。

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