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希少疾患を引き起こすGαs機能喪失型バリアントは、GPCRシグナル伝達に対して変異特異的影響を及ぼしている

Loss-of-function Gαs rare disease variants exert mutation-specific effects on GPCR signaling

Research Article

SCIENCE SIGNALING
20 May 2025 Vol 18, Issue 887
DOI: 10.1126/scisignal.ado7543

Theo Redfern-Nichols1, Shannon L. O’Brien2, 3, Xianglin Huang1, Brian Medel-Lacruz4, Davide Calebiro2, 3, Jana Selent4, Graham Ladds1, *, Maria Marti-Solano1, *

  1. 1 Department of Pharmacology, University of Cambridge, Tennis Court Road, Cambridge CB2 1PD, UK.
  2. 2 Department of Metabolism and Systems Science, College of Medicine and Health, University of Birmingham, Birmingham B15 2TT , UK.
  3. 3 Centre of Membrane Proteins and Receptors (COMPARE), Universities of Nottingham and Birmingham, Birmingham B15 2TT , UK.
  4. 4 Research Programme on Biomedical Informatics, Hospital del Mar Medical Research Institute, Department of Experimental and Health Sciences, Pompeu Fabra University, Barcelona, 08003, Spain.
  5. * Corresponding author. Email: grl30@cam.ac.uk (G.L.); mm2402@cam.ac.uk (M.M.-S.)

Editor's summary

偽性副甲状腺機能低下症Ic型は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)により活性化されるGαsサブユニット(GNAS)をコードする遺伝子の、母性遺伝性機能喪失型変異によって引き起こされる。Redfern-Nicholsらは、母親由来のGNASのみが発現している腎臓において、これらGαのバリアント2つ(L388RおよびE392K)がどのようにGPCRシグナル伝達に影響するのかを検討した。その結果、変異に影響されると考えられるGPCRを同定し、この変異がGαs活性化における異なる段階に影響することを明らかにした。この知見は、患者の変異状態に基づいてGαs関連疾患の適切な治療法を選択するための戦略を示唆し、さらに、他の正常な状態および病的状態における組織特異的GPCR - Gタンパク質のカップリングを研究するための枠組みを与えるものである。—Annalisa M. VanHook

要約

Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヘテロ三量体Gタンパク質を活性化して細胞内の反応を調節する細胞外シグナルを検出する、膜貫通型の受容体である。GPCRと共役することができるGαタンパク質は16個のみであることから、1つのGαが数多くの受容体の機能に影響する可能性がある。本稿でわれわれは、母性遺伝する希少疾患である偽性副甲状腺機能低下症Ic型(PHPIc)と関係している、Gαsの2つの変異型(L388RおよびE392K)を検討した。Gαsはインプリント遺伝子によりコードされ、特定の組織に存在する唯一のバージョンのタンパク質である変異型Gαsが産生されることで、組織特異的な疾患症状が生じることになる。われわれは、3次元構造、GPCR - Gタンパク質のカップリングの特異性、トランスクリプトーム、生物物理学研究、およびシステム薬理学的モデリングによる分子動力学から得られたデータを統合し、PHPIcの病態生理に関与する組織である腎臓において、そのシグナル伝達がGαs変異によって変化する可能性があるGPCRを同定した。副甲状腺ホルモン受容体1(PTH1R)によるGタンパク質の活性化の解析から、L388RはGαsと受容体の相互作用を阻害する一方で、E392Kはヘテロ三量体Gsの受容体誘導性の活性化を抑制することを明らかにした。このことは、異なるシグナル伝達段階が、同じ疾患と関連している特定のGαs変異により変化する可能性を示している。これらの知見から、患者別の治療戦略を提案するためには、変異特異的なGPCRシグナル伝達の攪乱を研究することが重要であることが浮き彫りにされた。さらにわれわれの方法により、さまざまな生理的および病態生理学的状態におけるGPCRシグナル伝達の多様性を研究するための青写真が提供される。

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