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多発性硬化症マウスモデルにおいてSMAD2のS-パルミトイル化が自身のリンカー領域のリン酸化とTH17細胞の分化を促進する

SMAD2 S-palmitoylation promotes its linker region phosphorylation and TH17 cell differentiation in a mouse model of multiple sclerosis

Research Article

SCIENCE SIGNALING
27 May 2025 Vol 18, Issue 888
DOI: 10.1126/scisignal.adr2008

Mingming Zhang1, 2, †, *, Tao Yu1, 2, †, Yinong Liu2, †, Xuan Lu2, Wenzhe Chen2, Lixing Zhou3, Yuejie Xu4, Min Yang2, Andrew D. Miller5, Hening Lin1, 2, 6, *, ‡

  1. 1 Howard Hughes Medical Institute, Department of Chemistry and Chemical Biology, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  2. 2 Department of Chemistry and Chemical Biology, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  3. 3 Center of Gerontology and Geriatrics/National Clinical Research Center for Geriatrics, West China Hospital, Sichuan University, Chengdu 610041, China.
  4. 4 Department of Gastroenterology, Drum Tower Hospital Affiliated to Nanjing Medical University, Nanjing 210008, China.
  5. 5 Section of Anatomic Pathology, Department of Population Medicine and Diagnostic Sciences, Cornell University College of Veterinary Medicine, Ithaca, NY 14853, USA.
  6. 6 Department of Molecular Biology and Genetics, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
  7. † These authors contributed equally to this work.
  8. * Corresponding author. Email: linh1@uchicago.edu (H.L.); doczmm@sjtu.edu.cn (M.Z.)
  9. ‡ Present address: Howard Hughes Medical Institute, Department of Medicine and Department of Chemistry, University of Chicago, Chicago, IL 60637, USA.

Editor's summary

同じ受容体によって活性化され、かなりの相同性を有しているにもかかわらず、SMAD2は炎症性TH17細胞の分化を促進し、SMAD3は抗炎症性Treg細胞の生成を駆動する。Zhangらは、SMAD特異的な翻訳後修飾を明らかにした。in vitroにおいて、SMAD2は動的なパルミトイル化を受け、それによって自身のリン酸化と活性化、さらには転写因子STAT3との相互作用が促進され、結果的にTH17細胞が生成されたが、SMAD3ではそのような作用はみられなかった。TH17細胞依存性の多発性硬化症のマウスモデルでは、SMAD2のパルミトイル化・脱パルミトイル化サイクルを妨げると、TH17細胞数が減少し、疾患重症度が低下したことから、この経路を標的にすることでTH17細胞依存性の炎症疾患を治療できる可能性があることが示された。—John F. Foley

要約

転写制御因子SMAD2およびSMAD3は、サイトカインTGFβに応答する主要シグナル伝達経路を共有する。ただし、SMAD2はナイーブCD4+ T細胞から炎症性ヘルパーT17細胞(TH17細胞)への分化を刺激するが、SMAD3は抗炎症性制御性T細胞(Treg細胞)の分化を刺激する。本稿でわれわれは、TH17細胞の分化にとって重要となる動的なSMAD2特異的翻訳後修飾について報告する。SMAD2はシステイン-41およびシステイン-81をパルミトイルトランスフェラーゼDHHC7によって可逆的にS-パルミトイル化され、アシルタンパク質チオエステラーゼAPT2によって脱パルミトイル化されたが、SMAD3ではそのような修飾はみられなかった。結果的に、SMAD2は細胞内膜に動員され、そこでリンカー領域をリン酸化されて、転写制御因子STAT3と相互作用した。SMAD2-STAT3複合体の核移行は標的遺伝子の発現を誘導し、TH17細胞の分化を促進した。多発性硬化症(MS)のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎を有するマウスにおいて、パルミトイル化・脱パルミトイル化サイクルを阻害することによってSMAD2-STAT3結合を妨げると、TH17細胞の分化が抑制され、疾患重症度が低下した。このように、DHHC7およびAPT2に媒介されるS-パルミトイル化・脱パルミトイル化サイクルは、SMAD2を特異的に調節しており、これはSMAD2とSMAD3の機能的差異とTH17細胞分化におけるSMAD2特有の役割について洞察を与えるものである。さらに、これらの知見は、TH17細胞に媒介されるMSなどの炎症性疾患の治療につながる治療標的候補としてDHHC7とAPT2に光を当てている。

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