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BRAF V600E変異を有するがん細胞において、BRAF遺伝子増幅はMEK阻害剤耐性獲得を促進する

BRAF Gene Amplification Can Promote Acquired Resistance to MEK Inhibitors in Cancer Cells Harboring the BRAF V600E Mutation

Research Article

Sci. Signal., 23 November 2010
Vol. 3, Issue 149, p. ra84
[DOI: 10.1126/scisignal.2001148]

Ryan B. Corcoran1,2, Dora Dias-Santagata3, Kristin Bergethon3, A. John Iafrate3, Jeffrey Settleman1,2*, and Jeffrey A. Engelman1,2*

1 Massachusetts General Hospital Cancer Center, Boston, MA 02129, USA.
2 Department of Medicine, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
3 Department of Pathology, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: Settleman.jeffrey@gene.com (J.S.); jengelman@partners.org (J.A.E.)

要約:メラノーマ(黒色腫)や結腸直腸がんなどのいくつかのタイプの腫瘍では、BRAFの発がん性変異が認められる。BRAF変 異を有する腫瘍では、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路の活性が上昇し、BRAFおよびMEK(マイトジェン活性化または細胞外シグナル調節プロ テインキナーゼキナーゼ)阻害薬に対する感受性が亢進している。われわれは、薬剤耐性獲得の機構を特定するために、MEKまたはBRAFの阻害に対する感 受性の高い2つのBRAF V600E変異結腸直腸がん細胞株から、アロステリックなMEK阻害薬AZD6244に対する耐性クローンを作製した。BRAF阻害薬に対する交差耐性を示したこれらのAZD6244耐性(AR)クローンは、BRAF遺伝子の増幅を介して耐性を獲得していた。ほんの一部の無処理親細胞に既存のBRAF増幅が認められた。BRAF変異結腸直腸がんの細胞の一群において同様の増幅が認められた。細胞株において、BRAFの 増幅によってリン酸化MEKの存在量が増大し、ERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)のリン酸化を阻害するAZD6244の能力が抑制された。AR細胞に おいてERKのリン酸化を阻害するAZD6244の能力は、リン酸化MEKの存在量を親細胞のレベルにまで低下させるような低濃度のBRAF阻害薬処理に よって回復した。MEKとBRAFの阻害の併用は、MEKまたはBRAF阻害薬それぞれに対する耐性を完全に克服し、各阻害薬の単独処理に比べて親細胞に おける効果も高かった。これらの知見から、BRAFの増幅がMEKとBRAFの阻害薬に対する耐性機構に関連すると考えられ、この耐性機構を克服またはできれば予防するための臨床戦略としてMEKとBRAFの阻害の併用が示唆される。

R. B. Corcoran, D. Dias-Santagata, K. Bergethon, A. J. Iafrate, J. Settleman, J. A. Engelman, BRAF Gene Amplification Can Promote Acquired Resistance to MEK Inhibitors in Cancer Cells Harboring the BRAF V600E Mutation. Sci. Signal. 3, ra84 (2010).

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