植物生物学
UPBEATな成長

Plant Biology
UPBEAT Growth

Editor's Choice

Sci. Signal., 23 November 2010
Vol. 3, Issue 149, p. ec354
[DOI: 10.1126/scisignal.3149ec354]

 Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

要約:シロイヌナズナ(Arabidopsis)の根では、細胞は成長点と呼ばれる領域で増 殖し、容積を増して伸長領域で分化し始める。Tsukagoshiら(Wellsらも参照)は、遺伝子発現データを利用して、シロイヌナズナにおいて、成 長点と伸長領域の境界の移行領域(transition zone)で存在量が多い転写因子を同定した。転写因子UPBEAT1(UPB1)の存在量を減少させる変異を有するupb1-1植物は、野生型植物と比べて根が長く、成長点の皮層細胞が多かった。対照的に、UPB1を 過剰発現する3系統は、野生型植物と比べて根が短く、成長点の皮層細胞が少なかった。蛍光標識したUPB1は、主として伸長領域に局在した。UPB1の直 接の転写標的には、ペルオキシダーゼをコードする3つの遺伝子(PER39、PER40、およびPER57)が含まれ、UPB1と同様に移行領域に多く存 在した。これらのペルオキシダーゼをコードする遺伝子の存在量は、upb1-1変異植物で増大し、UPB1過剰発現植物で減少していたので、UPB1はこれらの遺伝子の発現を抑制した。さらに、PER57を過剰発現する植物は、野生型植物と比較して成長点が大きかった。H2O2で処理すると、野生型植物では成長点と根長が減少したが、upb1-1やUPB1を過剰発現する植物では減少しなかった。対照的に、H2O2スカベンジャーで処理すると、野生型およびUPB1過剰発現植物で成長点および根長が増加したが、upb1-1植物では増加しなかった。ペルオキシダーゼ活性を阻害すると、野生型およびupb1-1植物で成長点のサイズが減少したが、UPB1過剰発現植物では減少しなかった。野生型植物では、H2O2の濃度は成長点よりも伸長領域で高かった。対照的に、NADPHオキシダーゼにより産生されるスーパーオキシド(O2•–)の濃度は、伸長領域よりも成長点で高く、upb1-1変 異体では上昇しており、UPB1過剰発現植物では低下していた。UPB1経路は、根長の調節に関与する2つのシグナル伝達経路であるサイトカイニンおよび オーキシンとは無関係に働くようであった。このように、UPB1は、シロイヌナズナの根において、活性酸素種の勾配形成に関して転写制御を行なう。活性酸 素種の勾配形成は、成長点領域とと伸長領域の間の移行、したがって細胞の増殖と分化の間の移行を決定する。

H. Tsukagoshi, W. Busch, P. N. Benfey, Transcriptional regulation of ROS controls transition from proliferation to differentiation in the root. Cell 143, 606-616 (2010). [PubMed]

D. M. Wells, M. H. Wilson, M. J. Bennett, Feeling UPBEAT about growth: Linking ROS gradients and cell proliferation. Dev. Cell 19, 644-646 (2010). [PubMed]

W. Wong, UPBEAT Growth. Sci. Signal. 3, ec354 (2010).

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