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複雑なシグナル伝達ネットワークを代表的カーネルに縮約する

Reduction of Complex Signaling Networks to a Representative Kernel

Research Article

Sci. Signal., 31 May 2011
Vol. 4, Issue 175, p. ra35
[DOI: 10.1126/scisignal.2001390]

Jeong-Rae Kim1,2, Junil Kim1, Yung-Keun Kwon1,3, Hwang-Yeol Lee1, Pat Heslop-Harrison4, and Kwang-Hyun Cho1*

1 Department of Bio and Brain Engineering, Korea Advanced Institute of Science and Technology, 291 Daehak-ro, Yuseong-gu, Daejeon 305-701, Republic of Korea.
2 Department of Mathematics, University of Seoul, Seoul 130-743, Republic of Korea.
3 School of Computer Science and Information Technology, University of Ulsan, Ulsan 680-749, Republic of Korea.
4 Department of Biology, University of Leicester, Leicester LE1 7RH, UK.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: ckh@kaist.ac.kr

要約:細胞内で発生する生体分子の相互作用のネットワークは、大きくて複雑である。そのようなネットワークを解析する際には、ネットワークの複雑性を、検討中の出力に必須の調節機能を保持する「カーネル」に縮約することが役立つ場合がある。われわれは、そのようなカーネルを同定するためのアルゴリズムを開発し、結果として得られたカーネルがネットワークの動態を維持していることを示した。KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes;京都遺伝子ゲノム百科事典)データベースから検索されたヒトシグナル伝達経路すべての統合ネットワークを用いて、われわれはこのネットワークのカーネルを同定し、カーネルの特性をもとのネットワークの特性と比較した。カーネル外のノードをコードする遺伝子に対する必須遺伝子の比率は約10%であるのに対して、カーネル内のノードをコードする遺伝子の約32%が必須遺伝子であることがわかった。さらに、カーネルノードの95%がメンデル性疾患遺伝子に対応すること、ネットワークに関連する合成致死遺伝子の対の93%がカーネルに含まれることもわかった。カーネル内のノードに対応する遺伝子の進化速度は遅く、さまざまな組織に普遍的に発現し、種間で高度に保存されていた。さらに、カーネル遺伝子には多数の薬物標的が含まれたことから、他のカーネルノードが薬物標的になる可能性が示唆された。ネットワーク全体を単純化することによって、大規模なシグナル伝達ネットワークの効率的なモデル化と、複雑な枠組み内の中心的構造の解明が可能になる。

J.-R. Kim, J. Kim, Y.-K. Kwon, H.-Y. Lee, P. Heslop-Harrison, K.-H. Cho, Reduction of Complex Signaling Networks to a Representative Kernel. Sci. Signal. 4, ra35 (2011).

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