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ヒト制御性T細胞は通常型T細胞におけるT細胞受容体誘導性Ca2+、NF-κBおよびNFATシグナル伝達を速やかに抑制する

Human Regulatory T Cells Rapidly Suppress T Cell Receptor–Induced Ca2+, NF-κB, and NFAT Signaling in Conventional T Cells

Research Article

Sci. Signal., 20 December 2011
Vol. 4, Issue 204, p. ra90
[DOI: 10.1126/scisignal.2002179]

Angelika Schmidt1*, Nina Oberle1*, Eva-Maria Weiβ1, Diana Vobis1, Stefan Frischbutter2, Ria Baumgrass2, Christine S. Falk3, Mathias Haag4, Britta Brügger4, Hongying Lin5, Georg W. Mayr5, Peter Reichardt6, Matthias Gunzer6, Elisabeth Suri-Payer1, and Peter H. Krammer1

1 Division of Immunogenetics (D030), Tumor Immunology Program, German Cancer Research Center (DKFZ), 69120 Heidelberg, Germany.
2 Deutsches Rheuma-Forschungszentrum, a Leibniz Institute, 10117 Berlin, Germany.
3 Institute for Transplant Immunology, OE 8889, Hannover Medical School, 30625 Hanover, Germany.
4 Heidelberg University Biochemistry Center, 69120 Heidelberg, Germany.
5 Institut für Biochemie und Signaltransduktion, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, 20246 Hamburg, Germany.
6 Institute of Molecular and Clinical Immunology, Otto-von-Guericke-University-Magdeburg, 39120 Magdeburg, Germany.

* These authors contributed equally to this work.

† To whom correspondence should be addressed. E-mail: P.Krammer@dkfz.de

要約:CD4+CD25hiFoxp3+制御性T細胞(Treg細胞)は、自己免疫疾患の防止にとって重要な自己免疫寛容に必須のメディエーターであるが、Treg細胞は抗腫瘍免疫をも抑制してしまう可能性がある。Treg細胞は、CD4+CD25-の通常型T細胞(Tcon細胞)の増殖を抑制するとともに、これらの細胞のエフェクターサイトカイン産生能も抑制するが、このような抑制の分子的機構については不明である。今回われわれは、ヒトTreg細胞が、Tcon細胞におけるT細胞受容体(TCR)の活性化に応答したカルシウムイオン(Ca2+)の細胞内貯蔵部位からの放出を速やかに抑制することを明らかにした。Ca2+シグナル伝達が抑制されることによって、転写因子である活性化T細胞核内因子T細胞1(NFAT1)の脱リン酸化が低下(それにより活性化が低下)し、核内因子κB(NF-κB)の活性化が低下した。対照的に、Treg細胞と共培養したTcon細胞におけるCa2+-非依存性の事象、たとえばTCR近位シグナル伝達や転写因子であるアクチベータータンパク質1(AP-1)の活性化は、影響を受けなかった。Treg細胞との共培養によって、TCR刺激を受けたTcon細胞における細胞内Ca2+動員は抑制されたが、イノシトール1,4,5-トリスリン酸の生成は抑制されなかった。Tcon細胞におけるTreg細胞誘導性のNFATとNF-κB活性化の抑制、およびサイトカインであるインターロイキン-2をコードする遺伝子の発現の抑制は、細胞内Ca2+濃度を増加させることによって回復した。今回の結果から、従来は知られていなかったTreg細胞を介する速やかな抑制の機構が解明された。Treg細胞の機能に関する理解を深まることによって、自己免疫疾患やがんに対する治療法の開発に活用されるかもしれない。

A. Schmidt, N. Oberle, E.-M. Weiβ, D. Vobis, S. Frischbutter, R. Baumgrass, C. S. Falk, M. Haag, B. Brügger, H. Lin, G. W. Mayr, P. Reichardt, M. Gunzer, E. Suri-Payer, P. H. Krammer, Human Regulatory T Cells Rapidly Suppress T Cell Receptor-Induced Ca2+, NF-κB, and NFAT Signaling in Conventional T Cells. Sci. Signal. 4, ra90 (2011).

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