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タンパク質PAINT:シグナル伝達タンパク質を用いた超高分解能顕微鏡法
Protein-PAINT: Superresolution microscopy with signaling proteins
SCIENCE SIGNALING
1 Feb 2022 Vol 15, Issue 719
DOI: 10.1126/scisignal.abg9782
Megan V. Farrell, Andrea C. Nunez, Zhengmin Yang, Pablo Pérez-Ferreros, Katharina Gaus†, Jesse Goyette*
EMBL Australia Node in Single Molecule Science, School of Medical Sciences, University of New South Wales, Sydney, Australia.
* Corresponding author. Email: j.goyette@unsw.edu.au
† Deceased.
要約:
超高分解能技術は、複雑な細胞構造や細胞過程に関するわれわれの理解を前進させてきたが、タグや抗体を介して標的にフルオロフォア(蛍光色素分子)を連結させる必要があり、かさ張るせいで十分に標識化できないこともある。この制約を克服するために、われわれはシグナル伝達タンパク質の天然の相互作用ドメインを利用することによって、そのシグナル伝達タンパク質の結合位置をナノスケールで可視化できる技術を開発した。本稿でわれわれは、pPAINT(protein point accumulation in nanoscale topography、ナノスケールトポグラフィーにおけるタンパク質の点集積)が新しい単一分子局在化顕微鏡法(SMLM:single-molecule localization microscopy)技術であることを実証し、シグナル伝達分子によくみられるSrcホモロジー2(SH2)ドメインを可視化することによってT細胞シグナル伝達を調べる目的でこの技術を用いた。SH2ドメイン含有タンパク質を細胞膜に再配置すると、SH2ドメインは受容体の優先的にリン酸化されたチロシン残基に選択的、一過的、可逆的に結合する。この一過性の結合が、全反射照明顕微鏡で観察したときにSMLMに必要な確率論的点滅イベントをもたらし、無傷細胞における結合係数の定量化を可能にする。われわれはpPAINTを用いて、Zap70、PI3K、Grb2、Syk、Eat2、SHP2など、複数のT細胞受容体近位シグナル伝達分子の結合部位を明らかにし、これらのプローブの多重化が可能であることを示した。また、PI3KのタンデムSH2ドメインの結合半減期はT細胞の免疫シナプスにある結合部位クラスターのサイズと相関するが、Eat2の一価SH2ドメインの場合は、結合寿命が長いほど、より小さなクラスターと関連していることも示した。これらの結果は、細胞膜におけるリン酸化チロシンを介したシグナル伝達過程を調べるうえでのpPAINTの可能性を示している。