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乳がん細胞のマルチオミクス・プロファイリングから、AKT分解へのストレスMAPKと関連した感受性が明らかに

Multiomic profiling of breast cancer cells uncovers stress MAPK-associated sensitivity to AKT degradation

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SCIENCE SIGNALING
27 Feb 2024 Vol 17, Issue 825
[DOI: 10.1126/scisignal.adf2670]

Emily C. Erickson1, 2, †, Inchul You3, †, Grace Perry1, Aurelien Dugourd4, Katherine A. Donovan2, 5, Claire Crafter6, Jeffrey W. Johannes7, Stuart Williamson6, Jennifer I. Moss6, Susana Ros6, Robert E. Ziegler7, Simon T. Barry6, Eric S. Fischer2, 5, Nathanael S. Gray3, Ralitsa R. Madsen8, *, ‡, Alex Toker1, *

  1. 1 Department of Pathology, Medicine and Cancer Center, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
  2. 2 Department of Biological Chemistry and Molecular Pharmacology, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
  3. 3 Department of Chemical and Systems Biology, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA.
  4. 4 Faculty of Medicine, and Heidelberg University Hospital, Institute for Computational Biomedicine, Heidelberg University, Heidelberg 69120, Germany.
  5. 5 Department of Cancer Biology, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA 02215, USA.
  6. 6 Research and Early Development, Oncology R&D, AstraZeneca, Cambridge CB2 0AA, UK.
  7. 7 Research and Early Development, Oncology R&D, AstraZeneca, Waltham, MA 02451, USA.
  8. 8 University College London Cancer Institute, Paul O'Gorman Building, University College London, London WC1E 6BT, UK.

* Corresponding author. Email: atoker@bidmc.harvard.edu (A.T.); rmadsen001@dundee.ac.uk (R.R.M.)

† These authors contributed equally to this work.

‡ Present address: MRC-Protein Phosphorylation and Ubiquitylation Unit, School of Life Sciences, University of Dundee, Dundee DD1 5EH, UK.

Editor's summary

分解薬は、プロテアソームによる分解が行われるように特定のタンパク質を標的とし、これにより、がん細胞を触媒反応阻害薬により処理したときに多く生じるシグナル伝達経路の再構成が回避されると考えられている。Ericksonらは、多くのがん種において活性が亢進している増殖および生存促進性キナーゼAKTに対する第二世代の分解薬を作成し、それが及ぼす細胞効果を明らかにした。この第二世代の分解薬は、第一世代の分解薬と比べて速やかにAKTを除去し、AKT下流のシグナル伝達の阻害および乳がん細胞株の増殖の阻害に対しては、AKTの触媒反応阻害薬と比べて高い有効性を示した。複数の統合解析から、この第二世代のAKT分解薬に最も高い感受性をもつ乳がん細胞株は、ストレス活性化キナーゼJNKの基礎活性をもっていること、そのため、このAKT分解薬に対する感受性を予測するバイオマーカー候補になる可能性が明らかとなった。—Wei Wong

要約

50%を超えるヒト腫瘍では、セリン/スレオニンキナーゼであるAKTの過剰活性化がみられる。現世代のAKT阻害薬について臨床的有効性のエビデンスは得られているものの、その治療域はまだ改善できる可能性がある。本稿でわれわれは、乳がん細胞株におけるAKTに依存した表現型の細胞性抑制に関して触媒性AKT阻害を凌駕する、第二世代のAKT分解薬「INY-05-040」を開発したことを報告する。288のがん細胞株を用いた増殖阻害スクリーニングにより、このINY-05-040は、われわれが開発した第一世代のAKT分解薬(INY-03-041)と比べて著明に高い効力をもつこと、さらに、これら化合物はいずれも、GDC-0068による触媒性のAKT阻害よりも強い阻害を示すことが確認された。乳がん細胞を用いたマルチオミクス・プロファイリングおよび因果関係ネットワークの統合から、INY-05-040の高い効力はAKTシグナル伝達とこれに続くストレス・マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)c-Jun N末端キナーゼ(JNK)の誘導の持続的抑制と関連することが実証された。さらに、増殖阻害アッセイと、公表されているトランスクリプトミクス、プロテオミクスおよび逆相タンパク質アレイ(RPPA)の測定結果を統合した結果、AKT分解に対する乳がんの感受性を示すバイオマーカーとして、基底JNKシグナル伝達の低さが立証された。まとめると今回の研究から、治療上重要な化合物をネットワーク全体のシグナル伝達作用にマッピングするための枠組みが示され、AKTシグナル伝達の強力な薬理学的抑制物質としてINY-05-040が同定された。

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