• ホーム
  • がん関連線維芽細胞が、内皮細胞の機能に影響するマトリックス結合小胞を産生する

がん関連線維芽細胞が、内皮細胞の機能に影響するマトリックス結合小胞を産生する

Cancer-associated fibroblasts produce matrix-bound vesicles that influence endothelial cell function

Research Resources

SCIENCE SIGNALING
12 Mar 2024 Vol 17, Issue 827
[DOI: 10.1126/scisignal.ade0580]

Alice Santi1, 2, †, Emily J. Kay1, †, Lisa J. Neilson1, Lynn McGarry1, Sergio Lilla1, Margaret Mullin3, Nikki R. Paul1, Frédéric Fercoq1, Grigorios Koulouras1, 4, Giovanny Rodriguez Blanco1, Dimitris Athineos1, Susan Mason1, Mark Hughes1, Gemma Thomson1, Yann Kieffer5, 6, Colin Nixon1, Karen Blyth1, 4, Fatima Mechta-Grigoriou5, 6, Leo M. Carlin1, 4, Sara Zanivan1, 4, *

  1. 1 Cancer Research UK Scotland Institute, Glasgow G61 1BD, UK.
  2. 2 Department of Experimental and Clinical Biomedical Sciences, Università degli Studi di Firenze, viale Morgagni 50, 50134 Firenze, Italy.
  3. 3 College of Medical, Veterinary, and Life Sciences, Institute of Infection, Immunity and Inflammation, University of Glasgow, Glasgow G12 8QQ, UK.
  4. 4 School of Cancer Sciences, University of Glasgow, Glasgow G61 1QH, UK.
  5. 5 Equipe Labellisée Ligue Nationale Contre le Cancer, Institut Curie, PSL Research University, 26, rue d'Ulm, 75005 Paris, France.
  6. 6 INSERM, U830, 75005 Paris, France.

* Corresponding author. Email: s.zanivan@beatson.gla.ac.uk

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

がん関連線維芽細胞は、一部、腫瘍微小環境中の細胞にタンパク質を運ぶことができる細胞外小胞を放出することにより、腫瘍増殖を促進する。Santiらは、血管内皮細胞と、乳がん患者から単離したがん関連線維芽細胞との細胞間コミュニケーションを検討した。内皮細胞はin vitroおよびin vivoにおいて、がん関連線維芽細胞により放出された細胞外小胞、特にマトリックス結合小胞からタンパク質を取り込んだ。がん関連線維芽細胞からの膜糖タンパク質THY1を取り込むことで、内皮細胞に対する単球の接着性が亢進した。ほとんどのマトリックス結合小胞を放出していたがん関連線維芽細胞は、筋線維芽細胞と類似していた。したがって、筋線維芽細胞様のがん関連線維芽細胞により放出される、内皮細胞の機能を変化させるタンパク質を同定することで、この細胞間コミュニケーションを阻害する標的候補が得られる可能性がある。—Wei Wong

要約

固形がんにおける多様な細胞種間の細胞間コミュニケーションは、腫瘍の増殖および転移に寄与している。がん関連線維芽細胞(CAF)のセクレトームはこれらの過程に重要な役割を果たしている。われわれはヒト乳房のCAFを用い、筋線維芽細胞の表現型をもつCAFが、内皮細胞(EC)と免疫細胞の相互作用に影響するタンパク質をECに輸送する細胞外小胞(EV)を放出することを明らかにした。質量分析に基づくプロテオミクスにより、CAFからECに輸送されるタンパク質を同定したが、これには細胞膜受容体が含まれていた。輸送される細胞膜結合タンパク質の1例としてTHY1を用い、CAFに由来するタンパク質が、ECに対する単球細胞株の接着性を亢進することを明かにした。CAFは、主なタンパク質輸送小胞であるマトリックス結合EVを大量に産生していた。このようにわれわれの研究は、CAF由来のマトリックス結合EVが、近接するがん細胞、間質細胞および免疫細胞の機能を調節することでどのように腫瘍病理に影響するかを調べる将来の研究への道を拓くものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2024年3月12日号

Editors' Choice

抗体の脂肪への蓄積による老化

Research Article

アダプタータンパク質STINGの活性化はリン脂質PI4Pとの相互作用に依存する

Research Resources

がん関連線維芽細胞が、内皮細胞の機能に影響するマトリックス結合小胞を産生する

最新のResearch Resources記事

2025年04月22日号

健常マウスと肥満マウスの肝臓における飢餓応答性代謝ネットワークの構造的堅牢性と時間的脆弱性

2025年04月15日号

発達時のシナプス刈り込み過程での運動ニューロントランスラトームの動的調節

2025年04月15日号

マイクロRNA miR-124を誘導する薬物が、レチノイン酸耐性神経芽腫細胞の分化を可能にする

2025年03月25日号

内因性Gαi活性の高感度バイオセンサーにより内因性GPCRアゴニスト応答の正確な特性評価が可能に

2025年02月25日号

シークエンシングに基づくスクリーニング法により線虫の非生存性変異体からEGFRシグナル伝達の調節因子を同定