多くの自己免疫疾患には、正常なタンパク質に対する抗体が存在するという特徴があります。例えば、関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis ; RA)では、シトルリン化ペプチドに対する抗体が見られます。また、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus ; SLE)では、二本鎖DNAや核タンパク質に対する抗体が疾患の指標とされています。
自己免疫疾患のなかでも、SLEとシェーグレン症候群や混合性結合組織病とを区別するためには、血中に存在する自己抗体のパターンの違いを見ます。自己抗体の検査は診断に極めて重要な一方、適切な抗体が検出されるまで「正式に」診断できないため、診断を待つ患者にとってはフラストレーションの原因となる可能性があります。さらには、自己抗体の検出が難しい場合もあります。
自己免疫疾患の評価方法の検討
Cellero™ では、自己免疫疾患患者から採取した血漿とMeso Scale社の血管損傷パネルを用いて、4種類のバイオマーカーの利用について評価を行いました。急性期タンパク質であるC反応性タンパク質(C-reactive protein ; CRP)および血清アミロイドA(serum amyloid A ;SAA)は、一般的に炎症反応の初期に10倍または100倍にも増加します。また、血管内皮細胞の細胞表面に発現するタンパク質であるICAM-1およびVCAM-1について、これらの可溶性タンパク質は、血管内皮損傷を受けた個体の血清および血漿中で見られます。試験では、下記3 群について、血漿中の各タンパク質の量を測定しました。
- 関節リウマチ(RA)患者
- 全身性エリテマトーデス(SLE)患者
- 様々な自己免疫疾患およびアレルギー疾患の患者
CRP 量について、RA 群では外れ値はあったものの、他の2 群よりも高値を示しました(図1)。SAA 量については、3 群間で同程度でした(図2)。また、CRP 値が高かった患者はSAA 値も高い結果となりました。
血管内皮損傷マーカーであるVCAM-1およびICAM-1について、SLE群では、他の2郡と比較し、中央値が高い結果となりました(図3、図4)。CRPの測定結果と比較して顕著な差が認められ、このことより、全身性エリテマトーデスでは血管内皮損傷が起こる傾向にあるのに対し、関節リウマチでは関節損傷が起こる傾向があると考えられます。
以上の結果より、バイオマーカー測定は自己免疫疾患における損傷の評価に有用なことが示唆されました。自己抗体が検出限界以下の場合は、急性期タンパク質であるC 反応性タンパク質(CRP)および血清アミロイドA(SAA)や血管内皮損傷マーカーの血中量を調べることで自己免疫疾患の状態を評価できる可能性があります。
自己免疫疾患の経過をモニタリングすることは難しく、より正確に把握するには様々なツールや生体試料を利用する必要があると考えられます。疾患研究をサポートするため、Cellero™では、自己免疫疾患をはじめ、様々な疾患由来の血液細胞(末梢血単核細胞やT 細胞等)、血漿・血清を取り揃えています。
Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Cellero™/Astarte Biologics, LLC for providing Autoimmune Desease Activity information presented here.
Cellero™ ヒト血液細胞
メーカー | 商品ページ |
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(メーカー略号:ASB) |
全身性エリテマトーデス(SLE : Systemic Lupus Erythematosus、慢性的な炎症性自己免疫疾患)患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)です。
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Treg(Regulatory T cell、制御性T細胞)は、他のT細胞の活性化や増殖を抑制する機能を持つT細胞のサブセットの一つです。
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