神経変性
グリアの死兆星

Neurodegeneration
Glial Death Star

Editor's Choice

Sci. Signal., 12 March 2013
Vol. 6, Issue 266, p. ec61
[DOI: 10.1126/scisignal.2004131]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

F. Bi, C. Huang, J. Tong, G. Qiu, B. Huang, Q. Wu, F. Li, Z. Xu, R. Bowser, X.-G. Xia, H. Zhou, Reactive astrocytes secrete lcn2 to promote neuron death. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 4069–4074 (2013). [Abstract] [Full Text]

ニューロンとグリアのあいだの情報交換は、神経系の発生と機能に不可欠であり、これらの双方向経路の調節異常は神経病態を引き起こす。筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)や前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)などの神経変性疾患は、神経毒性のある、または神経保護活性の低下した、したがってニューロン消失を促進する反応性アストロサイトによって特徴づけられることが多い。反応性グリアに神経毒性を与える要因を同定するために、Biらは、前脳のTAR DNA結合タンパク質43(TAR DNA-binding protein 43:TDP-43)のALS関連対立遺伝子を遺伝子導入により発現させることによってミクログリアとアストロサイトが活性化されたラットに由来する前脳切片から分泌される因子を調べた。このTDP-43モデルでは、トランスジェニックラットは、導入遺伝子の発現誘導のタイミングによって、FTLD、またはALSに似た運動ニューロン変性を発症した。著者らは、通常は脳切片培養に伴うグリア反応性を調節後、反応性アストロサイトから分泌される神経毒性因子としてリポカリン2(lcn2)を同定した。トランスジェニックTDP-43の脳切片培養の培養上清は、対照ラットの切片の皮質ニューロンの死を誘導したが、lcn2を抗体で除いた培養上清は、対照ラットの切片の皮質ニューロンの死を誘導しなかった。合成lcn2は、いくつかの種類の培養ニューロンの死を誘導したが、培養アストロサイト、培養ミクログリア、培養オリゴデンドロサイトの死を誘導しなかった。2つの異なるラット神経変性モデル由来の皮質運動ニューロンと脊髄運動ニューロンは、健康なラット由来のニューロンと比べて、lcn2に応答して死ぬ割合が高かった。Lcn2は、ALS様症状を示すトランスジェニックTDP-43ラットの脊髄内に蓄積し、アストロサイトマーカーと共存した。lcn2の転写産物は、変異型TDP-43のトランスジェニックな発現によってFTLD表現型を示すラットの脳内および他の2つのラット神経変性モデルで増加した。FTLD患者の脳組織サンプルでは、神経変性疾患を有さない患者のサンプルと比べて、Lcn2がより大量に存在した。脳脊髄液中のlcn2量の増加は、ヒトおよび神経変性ラットモデルでアルツハイマー病とすでに相関している。患者にみられるこの関連とBiらの結果とを考え合わせると、lcn2は、神経変性において重要な役割を果たしており、治療標的として、または神経変性疾患の進行のマーカーとして有用であるかもしれないことが示唆される。

A. M. VanHook, Glial Death Star. Sci. Signal. 6, ec61 (2013).

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2013年3月12日号

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