- ホーム
- バイオフィルム 微生物を多細胞性にする
バイオフィルム
微生物を多細胞性にする
Biofilms
Making Microbes Multicellular
Sci. Signal., 7 May 2013
Vol. 6, Issue 274, p. ec101
[DOI: 10.1126/scisignal.2004307]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
I. Kolodkin-Gal, A. K. W. Elsholz, C. Muth, P. R. Girguis, R. Kolter, R. Losick, Respiration control of multicellularity in Bacillus subtilis by a complex of the cytochrome chain with a membrane-embedded histidine kinase. Genes Dev. 27, 887-899 (2013). [Abstract] [Full Text]
多くの種類の細菌と同様に、枯草菌(Bacillus subtilis)は、個々の細胞にとってストレスが大きすぎると考えられる環境条件下における生存を向上させるために、バイオフィルムを形成する。これらの多細胞性のコミュニティーは、菌体外多糖およびアミロイド様タンパク質TasAを含む細胞外マトリックスによって互いに結合する。主要胞子形成制御因子SpoOAのリン酸化は、TasAおよび菌体外多糖生合成酵素をコードするオペロンの抑制解除につながる。SpoOAを活性化するリン酸化リレーに関与するヒスチジンキナーゼがいくつか同定された。Kolodkin-Galらは、それらのうちの2つKinAおよびKinBが独立な機構により呼吸の障害を感知することを報告する。正常酸素圧下では、枯草菌は滑らかなコロニーを形成したが、低酸素により、tasAの発現と細胞外マトリックスの堆積が促進され、しわのあるコロニーが生じた。この応答にはKinAおよびKinBが必要であり、最大限のマトリックス産生には高いイオン濃度が必要であったことから、ヘム含有チトクロムの関与が示唆された。遺伝学的実験からも、KinBの呼吸感知能にはチトクロムが必要であることが示唆され、この膜内在性キナーゼのタグ付加体は、呼吸鎖複合体のチトクロムと免疫共沈降した。対照的に、KinAは細胞質に存在するため、呼吸鎖複合体と会合する可能性は低い。その代わり、KinAは、リガンド結合でしばしば機能するPASドメインを有する。したがって、著者らは、アフィニティー精製KinAから抽出された低分子について質量分析を行い、NAD+であることを確認した。欠失分析から、KinAの3つのPASドメインのうち2つが、低酸素が誘導するコロニーにしわが入る頑強な応答に必要であることが示され、最初のPASドメインを欠失したKinA変異体はNAD+に結合できなかった。酸素呼吸の減少に伴い、NAD+:NADH比が減少したことから、正常呼吸条件下ではNAD+によってKinA活性が阻害される可能性があり、呼吸の減少によりこの阻害が緩和されることが示唆された。この研究から、枯草菌が酸素供給量不足の指標である呼吸減少を感知し、バイオフィルム形成を開始することで応答する、2つの独立な機構が同定される。
A. M. VanHook, Making Microbes Multicellular. Sci. Signal. 6, ec101 (2013).