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ショウジョウバエの長期記憶における核カルシウムシグナル伝達の必要性

Requirement for Nuclear Calcium Signaling in Drosophila Long-Term Memory

Research Article

Sci. Signal., 7 May 2013
Vol. 6, Issue 274, p. ra33
[DOI: 10.1126/scisignal.2003598]

Jan-Marek Weislogel*, C. Peter Bengtson, Michaela K. Müller, Jan N. Hörtzsch, Martina Bujard, Christoph M. Schuster, and Hilmar Bading†

Department of Neurobiology, Interdisciplinary Centre for Neurosciences (IZN), University of Heidelberg, INF 364, 69120 Heidelberg, Germany.

* Present address: A*STAR Neuroscience Research Partnership, 61 Biopolis Drive, #04-12 Proteos, Singapore 138673, Singapore.

† Corresponding author. E-mail: Hilmar.Bading@uni-hd.de

要約:カルシウムは進化を通じて細胞内シグナル伝達物質として用いられる。哺乳類の中枢神経系では、カルシウムが、転写依存性の持続的なニューロン適応に必要なシナプス‐核間の対話を媒介する。無脊椎動物の脳については、同様のプロセスにおける核カルシウムシグナル伝達の役割は解明されていない。本研究では、ショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ:Drosophila melanogaster)の成虫脳ニューロンのin vivoカルシウムイメージングによって、嗅覚回避条件付けで用いた脚電気ショックがニューロンの細胞質および核カルシウム濃度を一時的に上昇させることを明らかにした。これらのカルシウムシグナルは、匂いに関する学習および記憶を司る領域であるハエのキノコ体のケニオン細胞で検出された。条件付け中に核カルシウムシグナル伝達を急性遮断すると、長期的な嗅覚回避記憶の形成が選択的、可逆的に阻害されたが、短期的、中期的または麻酔耐性嗅覚記憶は影響を受けなかった。このように、ハエでは不安定な記憶を転写依存性の長期的記憶に変化させるために核カルシウムシグナル伝達が必要である。これらの結果から、核カルシウムが、脊椎動物、無脊椎動物いずれの脳においても、転写依存性の記憶固定に必要な進化的に保存されたシグナルであることが明らかになった。

J.-M. Weislogel, C. P. Bengtson, M. K. Müller, J. N. Hörtzsch, M. Bujard, C. M. Schuster, H. Bading, Requirement for Nuclear Calcium Signaling in Drosophila Long-Term Memory. Sci. Signal. 6, ra33 (2013).

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