ニューロン発生の調整

Neuroscience
Coordinating Neuronal Development

Editor's Choice

Sci. Signal., 18 June 2013
Vol. 6, Issue 280, p. ec136
[DOI: 10.1126/scisignal.2004421]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. M. Reimer, A. Norris, J. Ohnmacht, R. Patani, Z. Zhong, T. B. Dias, V. Kuscha, A. L. Scott, Y.-C. Chen, S. Rozov, S. L. Frazer, C. Wyatt, S.-i. Higashijima, E. E. Patton, P. Panula, S. Chandran, T. Becker, C. G. Becker, Dopamine from the brain promotes spinal motor neuron generation during development and adult regeneration. Dev. Cell 25, 478–491 (2013). [PubMed]

J. H. Kong, S. J. Butler, B. G. Novitch, My brain told me to do it. Dev. Cell 25, 436–438 (2013). [Online Journal]

脳による運動系の適切な制御には、脳から、脊髄内のターゲットである運動ニューロンまで遠距離に投射する軸索の成熟が同期化されることが必要である(Kongら参照)。Reimerらは発生中のゼブラフィッシュの脊髄において、間脳ニューロンによって放出されるドーパミンが、介在ニューロンを犠牲にして、運動ニューロンの特異化を媒介することを明らかにした。in situ解析の結果、胚脊髄において、間脳軸索が唯一のドーパミン作動性神経支配源であり、運動ニューロン前駆細胞はD4aドーパミン受容体陽性であった。薬理学的試験および機能獲得・喪失試験の結果、D4a受容体を介したドーパミンシグナル伝達は、運動ニューロン前駆細胞プールの増殖を促し、V2介在ニューロンのかわりに運動ニューロンに分化させることによって、運動ニューロンと特定の介在ニューロン(V2インターニューロン)のバランスを制御していることが明らかになった。D4a受容体はGi共役Gタンパク質共役受容体で、アデノシン3', 5'-一リン酸(cAMP)の産生を阻害し、ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達を減弱させるタンパク質キナーゼA(PKA)活性を阻害する。cAMP濃度を薬理学的に操作した結果、cAMPの減少は、Hhシグナル伝達を亢進することによって(Hh標的遺伝子発現の増加として測定)、脊髄中の運動ニューロン特異化に寄与した。また、運動ニューロンの特異化に必要な転写調節因子であり、HhメディエータであるGli2bをノックダウンすると、運動ニューロンが喪失し、ドーパミン受容体作動薬によって救済されなかった。臨床的に興味深いことに、ドーパミンが運動ニューロン特異化を刺激する能力は胚に限らず、脊髄を切断したゼブラフィッシュにおいて、傷害誘導性のD4a受容体転写の増加が脳隣接病変側(吻側)で認められ、遠位(尾側)では認められなかった。吻側は尾側と比べて新たに産生される運動ニューロンが多く、毒素によってドーパミン作動性軸索を特異的に除去すると、運動ニューロン産生が喪失した。一方、ドーパミン受容体作動薬を注入すると、病変尾側の部位におけるD4a受容体転写およびHhシグナル伝達が亢進し、運動ニューロン数が増加した。吻側での反応に影響はなかった。以上、ゼブラフィッシュでは、このような発生経路が脊髄損傷後に再活性化されると考えられる。

N. R. Gough, Coordinating Neuronal Development. Sci. Signal. 6, ec136 (2013).

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2013年6月18日号

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