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宿主病原体相互作用
宿主防御の痛みを伴う破壊

Host-Pathogen Interactions
Painful Subversion of the Host Defense

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 September 2013
Vol. 6, Issue 292, p. ec213
[DOI: 10.1126/scisignal.2004713]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

I. M. Chiu, B. A. Heesters, N. Ghasemlou, C. A. Von Hehn, F. Zhao, J. Tran, B. Wainger, A. Strominger, S. Muralidharan, A. R. Horswill, J. B. Wardenburg, S. W. Hwang, M. C. Carroll, C. J. Woolf, Bacteria activate sensory neurons that modulate pain and inflammation. Nature 501, 52–57 (2013). [PubMed]

V. Nizet, T. Yaksh, Bacteria get on your nerves. Nature 501, 43– 44 (2013). [PubMed]

細菌感染は発赤、腫脹、発熱、および疼痛など古典的反応を引き起こす。血管拡張と動員された免疫細胞が、そのそれぞれに寄与している(Nizet and Yakshの論文参照)。Chiuらは、生細菌と加熱死菌の両方が、マウスにおいて侵害受容性ニューロンの直接的な活性化を来たし、痛覚過敏を誘発することを見いだした。マウス後肢足蹠を感染させたモデルにおいて、機械的、寒冷および熱過敏症は、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)感染の細菌量と最もよく相関し、組織の腫脹、免疫細胞の動員、または侵害受容性ニューロンを感作する炎症促進性サイトカインの濃度とは相関していなかった。Toll様受容体(TLR)シグナル伝達が遺伝的に損なわれているマウスや、T細胞およびB細胞の欠損マウスにおいて、感染誘発性の痛覚過敏は低下していなかった。しかし、遺伝子工学的に作製された侵害受容性ニューロン欠損マウスは、感染された野生型マウスに比べ、腫脹、免疫細胞の浸潤、最近傍のリンパ節のリンパ節腫脹が増大していたものの、黄色ブドウ球菌感染に対して機械的または熱過敏症を示さなかった。マウス後根神経節に、生存または熱で死滅させた黄色ブドウ球菌、もしくはその他6種類の加熱死菌を接種したとき、カルシウムシグナルが活性化された。黄色ブドウ球菌に対する反応を詳細に解析したところ、カプサイシン反応性の侵害受容性ニューロンにおいて活動電位が誘発されることが示された。細菌はN-ホルミル化ペプチドを産生し、大腸菌(Escherichia coli)から産生されるそのようなペプチドの1つ、または黄色ブドウ球菌から産生される1つは、カプサイシン反応性ニューロンのサブセットにおいてカルシウムの流入を刺激していた。N-ホルミル化ペプチド受容体(Fpr)を遺伝的に欠損させたマウスの後根神経節では、黄色ブドウ球菌ペプチドに応答したカルシウム流入が減少していた。Fpr-ノックアウトマウスにこのようなペプチドまたは熱不活化黄色ブドウ球菌のいずれかを注入したときも、機械的刺激に対する痛覚過敏が低下していた。また細菌は、種々の毒素を含む病原性因子を分泌している。黄色ブドウ球菌はα-ヘモリシン(α-HL)を分泌しており、これはマウスにおいて疼痛行動を誘発し、後根神経節のカプサイシン反応性ニューロンにおいてカルシウム流入と活動電位を刺激した。後根神経節でのα-HL活性に対する応答は、毒素の加熱により、またはオリゴマーを形成できない(すなわち孔を形成できない)突然変異を用いたときに失われていた。α-HLを欠損する黄色ブドウ球菌株の注射は、毒素産生株を注射した場合に比べ、低い痛覚過敏を引き起こした。侵害受容性ニューロンを欠損するマウスは、黄色ブドウ球菌感染に対する免疫応答が低下していたことから、これらのニューロンが免疫応答に伝達する機構の可能性について検討した。侵害受容性ニューロンに豊富に認められる神経ペプチドCGRP、ガラニン、およびソマトスタチンに対する受容体は、免疫細胞で検出された。加熱死滅させた黄色ブドウ球菌を曝露した培養マクロファージに対し、これらの神経ペプチドを添加したとき、炎症促進性サイトカインの放出が抑制された。黄色ブドウ球菌に感染させ、CGRPを注射したとき、流入領域リンパ節のリンパ節腫脹が抑制された。このように、細菌生成物はニューロンを活性化することで疼痛を直接刺激でき、それにより、免疫応答を抑制するシグナルを産生し、特に痛みを伴って病原体が宿主防御を破壊するもう1つの機構を確立している。

N. R. Gough, Painful Subversion of the Host Defense. Sci. Signal. 6, ec213 (2013).

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2013年9月10日号

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