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神経科学
プレセニリンのおかげでバッグからCa2+を取り出せる

Neuroscience
Presenilin Lets the Ca2+ Out of the Bag

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 September 2013
Vol. 6, Issue 293, p. ec219
[DOI: 10.1126/scisignal.2004725]

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. Wu, H. Yamaguchi, F. A. Lai, J. Shen, Presenilins regulate calcium homeostasis and presynaptic function via ryanodine receptors in hippocampal neurons. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 15091–15096 (2013).[Abstract] [Full Text]

L. D’Adamio, P. E. Castillo, Presenilin-ryanodine receptor connection. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 14825–14826 (2013).[Full Text]

家族性アルツハイマー病(familial Alzheimer’s disease:fAD)を有する患者の実に90%は、presenilin(PS)遺伝子に変異がある。PSに仲介されるγセクレターゼ活性によるアミロイド前駆体タンパク質のプロセシングの欠失がfADの発病に大きく寄与している可能性は高いが、Wuらは、リアノジン受容体(ryanodine receptor:RyR)が関与する別の機構を報告する。RyRは、小胞体(endoplasmic reticulum:ER)のリガンド型チャネルからなるファミリーである(D’AdamioとCastillo参照)。RyRを刺激するとERから細胞質へとカルシウムが放出され、細胞膜の電位型チャネルを通じて流入してシナプス前小胞開口分泌を促進するカルシウムを増強する可能性がある。Wuらは、海馬のCA3領域にPS1とPS2の条件的除去を有するマウス(PS-cDKO)由来の培養初代ニューロンと急性脳切片を使用し、シナプスの増強は損なわれるが、培養ニューロンのPSを欠損させてもベースラインのERカルシウム濃度、ERのカルシウムATPアーゼであるSERCA[sarco-ERカルシウムアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)]の存在量、またはリガンド型ER局在性カルシウムチャネルIP3R1(イノシトール1,4,5-三リン酸受容体)の存在量に影響しないことを示した。代わりに、PS-cDKOマウス脳切片由来のCA3領域の解析では、[3H]リアノジン結合の減少が示された。PS-cDKOマウスから培養された海馬ニューロンでは、RyRの存在量、RyRアゴニストであるカフェインと4-クロロ-m-クレゾールのERカルシウム放出を誘導する能力、カフェインによる興奮性シナプス後場電位(fEPSP)の増強が減少していた。RyR阻害物質であるダントロレンは、対照ニューロンではカフェインによるfEPSPの増強を減少させたが、PS-cDKOでは減少させなかった。3つすべてのRyRを標的とする2つの独立した低分子ヘアピン型RNAをレンチウイルスベクターによって海馬ニューロンに感染させると、RyR量はPS-cDKOニューロンと同程度まで減少し、カフェインまたは高濃度カリウムへの曝露によって誘導される細胞内カルシウムの増加を阻害した。さらに、RyRをノックダウンした個々のニューロンまたはPS-cDKOマウス由来のニューロンの電気生理学的測定では、頻回刺激によるシナプス伝達の促進が妨げられることが示された。シナプス増強の欠損に関連する認知機能の低下がfAD患者に認められることを考慮すれば、今回の知見から、PS遺伝子の変異がfADに寄与する仕組みについて新たな洞察が得られる可能性がある。

J. D. Berndt, Presenilin Lets the Ca2+ Out of the Bag. Sci. Signal. 6, ec219 (2013).

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2013年9月17日号

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プレセニリンのおかげでバッグからCa2+を取り出せる

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