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幹細胞
DIYの幹細胞ニッチ
Stem Cells
DIY Stem Cell Niche
Sci. Signal., 10 December 2013
Vol. 6, Issue 305, p. ec297
[DOI: 10.1126/scisignal.2004976]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
X. Lim, S. H. Tan, W. L. C. Koh, R. M. W. Chau, K. S. Yan, C. J. Kuo, R. van Amerongen, A. M. Klein, R. Nusse, Interfollicular epidermal stem cells self-renew via autocrine Wnt signaling. Science 342, 1226–1230 (2013). [Abstract] [Full Text]
J. Frede, P. H. Jones, Permission to proliferate. Science 342, 1183–1184 (2013). [Abstract] [Full Text]
幹細胞ニッチは、自己複製する幹細胞の集団を維持し、過剰な増殖を防ぐシグナルを提供する。ニッチによる制御性の影響がなければ、幹細胞は増殖しすぎて腫瘍を形成するか、未熟な状態で分化し、組織の再生能力を損なうかもしれない。Wntは幹細胞の維持と毛髪の成長に関連付けられていることから、Limらは、マウス毛包間表皮(interfollicular epidermis:IFE)(IFEには表皮再生に寄与すると思われる毛包幹細胞がない)において、Wntシグナル伝達が常在する幹細胞の制御に果たす役割を調べた。IFEの基底層には、Wnt標的遺伝子Axin2を発現する細胞が含まれ、細胞系譜追跡実験から、これらの細胞が自己複製する基底細胞と基底上層に存在する様々なタイプの分化細胞を増加させることが示唆された。これらの細胞は、創傷後の再生にも関与しており、これは、これらの細胞が上皮幹細胞であることと合致する。Wntエフェクターβカテニンをコードする遺伝子を条件的不活性化する、あるいは、アデノウイルスを介してWnt阻害因子Dkk1を過剰発現させることにより、Axin2発現細胞のWntシグナル伝達を妨害すると、これらの細胞が増殖を停止し、代わりに分化した薄い表皮が得られた。Axin2を発現する基底細胞は、Wnt4およびWnt10aを発現しており、ヒト皮膚から分離された基底上皮細胞もWnt4を発現していた。培養ヒトケラチノサイトはWntを産生し、これらの細胞をWnt分泌の低分子阻害薬で処理したところ、増殖が阻害され、分化マーカーの発現が刺激された。分泌型Wnt阻害分子Dkk3およびWIF1は、ヒト皮膚の基底上層に蓄積し、著者らは、Dkk3をコードする転写産物がマウスIFEのAxin2発現基底細胞に存在することを実証したが、Dkk3タンパク質は基底上層に蓄積したことから、Dkk3は基底幹細胞により産生され、拡散したことが示唆された。これらの結果から、オートクリンWntシグナル伝達が、基底部に位置する上皮幹細胞の自己複製を促進し、分化を抑制するのに対し、これらの細胞から分泌されるWnt阻害分子が基底上層のWntシグナル伝達を阻害することで、細胞が基底層を離れるにしたがい分化を促進するモデルが定義される。このように、この組織では、自己複製は、近隣のニッチ細胞からのシグナルではなく、幹細胞自身から分泌されるシグナルに依存している。FredeとJonesによるPerspectiveで述べられているように、創傷がこれらの幹細胞の増殖をどのように刺激するか、Wntシグナル伝達がこの過程に役割を果たすかどうかは、不明である。
A. M. VanHook, DIY Stem Cell Niche. Sci. Signal. 6, ec297 (2013).