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生理学
線維化の予防
Physiology
Foiling Fibrosis
Sci. Signal., 17 December 2013
Vol. 6, Issue 306, p. ec306
[DOI: 10.1126/scisignal.2005003]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
N. C. Henderson, T. D. Arnold, Y. Katamura, M. M. Giacomini, J. D. Rodriguez, J. H. McCarty, A. Pellicoro, E. Raschperger, C. Betsholtz, P. G. Ruminski, D. W. Griggs, M. J. Prinsen, J. J. Maher, J. P. Iredale, A. Lacy-Hulbert, R. H. Adams, D. Sheppard, Targeting of αv integrin identifies a core molecular pathway that regulates fibrosis in several organs. Nat. Med. 19, 1617–1624 (2013). [PubMed]
B. Hinz, It has to be the αv: Myofibroblast integrins activate latent TGF-β1. Nat. Med. 19, 1567–1568 (2013). [PubMed]
線維化と呼ばれるプロセスでは、コラーゲン性細胞外マトリックスが筋線維芽細胞により過剰に蓄積することで、臓器機能を障害することがある。トランスフォーミング増殖因子–β1(TGF-β1)は線維化を促進するサイトカインで、潜在型TGF-β1は筋線維芽細胞の表面で、細胞外マトリックスタンパク質の膜貫通型受容体であるインテグリンにより活性化される可能性がある。肝臓内では肝星細胞が線維芽細胞を生み出すと考えられており、Hendersonらは、(血小板由来増殖因子受容体βをコードしている)Pdgfrbのプロモーターの制御下で発現するCreリコンビナーゼを使って肝星細胞の遺伝子を欠損できることを見いだしている(Hinzの論文も参照のこと)。Itgavflox/flox;Pdgfrb-Creマウス(Itgavはαvインテグリンをコードしている)は肝星細胞中のαvインテグリンを欠損しており、このマウスは化学的に誘導される肝線維症から保護された。培養下で活性化されたとき、αvインテグリンを欠損している肝星細胞は対照細胞に比べ、細胞外マトリックスのタンパク質をコードする遺伝子の発現が減少し(この作用は、野生型細胞にαvインテグリン遮断抗体を添加することで生じる作用に類似している)、TGF-β1の分泌が低下し、TGF-β1エフェクター(転写因子Smad4)の活性化が低下していた。Itgavflox/flox;Pdgfrb-Creマウスは肺及び腎臓中の筋線維芽細胞のαvインテグリンも欠損しており、化学的に誘導される肺線維症および外科的に誘導される腎線維症から保護された。CWHM12はαvインテグリンへのリガンド結合をin vitroで遮断したが、そのR鏡像異性体であるCWHM 96は遮断しなかった。線維化誘導前の野生型マウスにCWHM 12を投与すると肝線維化が抑制され、線維症発現後のマウスに投与したときも肝臓と肺での進展が抑制されたが、CWHM 96の投与はそれらを抑制しなかった。このように、αvインテグリンの低分子阻害薬を開発することで、線維化を予防または進展抑制できるかもしれない。
W. Wong, Foiling Fibrosis. Sci. Signal. 6, ec306 (2013).