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免疫学
造血幹細胞を動員する
Immunology
Mobilizing Hematopoietic Stem Cells
Sci. Signal., 24 June 2014
Vol. 7, Issue 331, p. ec168
[DOI: 10.1126/scisignal.2005621]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
A. Burberry, M. Y. Zeng, L. Ding, I. Wicks, N. Inohara, S. J. Morrison, G. Núñez, Infection mobilizes hematopoietic stem cells through cooperative NOD-like receptor and Toll-like receptor signaling. Cell Host Microbe 15, 779–791 (2014). [PubMed]
G. Nigro, R. Rossi, P. H. Commere, P. Jay, P. J. Sansonetti, The cytosolic bacterial peptidoglycan sensor Nod2 affords stem cell protection and links microbes to gut epithelial regeneration. Cell Host Microbe 15, 792–798 (2014). [PubMed]
J. H. Fritz, NOD-like receptors have a grip on stem cells. Cell Host Microbe 15, 659–661 (2014). [PubMed]
大部分の造血幹細胞(HSC)は骨髄に存在しているが、脾臓に位置するものもあり、血液やリンパ系に存在するものさえある。これらのHSC集団は、全身性細菌感染などの高需要期に循環血中の免疫細胞を補充することができる。Burberryらは、大腸菌(Escherichia coli)によるマウスの全身性感染が、HSCを骨髄から脾臓へ動員し、その結果、骨髄のHSCが減少し、脾臓のHSCが増加することを見出した。感染した野生型マウスと比較して、Toll様受容体4(TLR4)もしくは、NODパターン認識受容体を通したシグナル伝達の下流エフェクターである受容体相互作用性セリン−スレオニンキナーゼ2(RIPK2)を欠損した感染マウスでは、脾臓に集まったHSCが少なかった。野生型マウスにTLR4アゴニストであるリポ多糖(LPS)を投与しても、脾臓におけるHSCの蓄積は開始されなかったが、LPSとNOD1アゴニストKF1Bの両方を投与すると開始された。TLR4およびNOD1シグナル伝達は、HSC自体ではなく、骨髄ニッチの放射線耐性細胞で機能し、HSC動員を始動した。感染は、既知のHSC動員因子である循環血中の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)量の増加を引き起こし、骨髄におけるHSCの維持を促進するケモカインであるCXCL12存在量の低下をもたらした。培養骨髄内皮細胞は、LPSとKF1Bに応答して、G-CSF産生を増加させ、CXCL12産生を減少させた。LPSとKF1Bを投与する前に、マウスをG-CSF遮断抗体で前処理すると、脾臓におけるHSC蓄積が防止された。G-CSF遮断抗体による前処理を受けた感染マウスに由来する脾臓HSCを、大腸菌感染前に致死量以下の放射線照射を受けたマウスに移植すると、全身性細菌の減少に対する効果が小さく、未処理の感染ドナーに由来する脾臓HSCと比較して、単核球および好中球数が減少するもとになった。このように、骨髄ニッチにおけるNOD1およびTLR4を通した病原体誘導性のシグナル伝達は、HSCを骨髄から脾臓に動員し、全身性感染と戦う助けとなる。NODシグナル伝達が幹細胞の機能に影響を与えることは、Nigroらも報告しており、Nigroらは、NOD2の微生物由来アゴニストにより誘導されたシグナル伝達が腸の幹細胞の生存を促進し、酸化ストレス誘導性の細胞死に対する抵抗性を改善したことを見出した。FritzによるCommentaryは、幹細胞機能の制御におけるNODシグナル伝達の意義について述べている。
A. M. VanHook, Mobilizing Hematopoietic Stem Cells. Sci. Signal. 7, ec168 (2014).