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一連のランダムな細胞内Ca2+スパイクの範囲内で刺激強度を高い信頼性でコード化

Reliable Encoding of Stimulus Intensities Within Random Sequences of Intracellular Ca2+ Spikes

Research Article

Sci. Signal., 24 June 2014
Vol. 7, Issue 331, p. ra59
[DOI: 10.1126/scisignal.2005237]

Kevin Thurley1,2,3, Stephen C. Tovey2, Gregor Moenke1, Victoria L. Prince4, Abha Meena2, Andrew P. Thomas4, Alexander Skupin5,6, Colin W. Taylor2*, and Martin Falcke1,7*

1 Mathematical Cell Physiology, Max Delbrück Center for Molecular Medicine, Robert Rössle Straße 10, Berlin 13125, Germany.
2 Department of Pharmacology, University of Cambridge, Tennis Court Road, Cambridge CB2 1PD, UK.
3 Institute for Theoretical Biology, Charité-Universitätsmedizin Berlin, Invalidenstraße 43, Berlin 10115, Germany.
4 Department of Pharmacology and Physiology, New Jersey Medical School, Rutgers, The State University of New Jersey, 185 South Orange Avenue, Newark, NJ 07103, USA.
5 Luxembourg Centre for Systems Biomedicine, 7 Avenue des Hauts Fourneaux, Esch sur Alzette 4362, Luxembourg.
6 National Center for Microscopy and Imaging Research, University of California, San Diego, 9500 Gilman Drive, La Jolla, CA 92093, USA.
7 Department of Physics, Humboldt University Berlin, Newtonstraße 15, Berlin 12489, Germany.

* Corresponding authors. E-mail: martin.falcke@mdc-berlin.de (M.F.); cwt1000@cam.ac.uk (C.W.T.)

要約

Ca2+は、広範に分布して多様な細胞活動を調節する細胞内メッセンジャーである。外部刺激は一連の細胞内Ca2+スパイクを誘発することが多く、スパイク頻度による刺激強度のコード化が可能である。だが、各スパイク間隔は確率論的要素を多分に含むため、細胞内のスパイクのタイミングはランダムである。われわれは、スパイク間隔の平均にも個々の細胞ごとにばらつきがみられることをヒト胚性腎臓(HEK)293細胞とラット初代培養肝細胞で見出した。Ca2+スパイクがそのような予測不可能性を示すなか、個々の細胞がどうやって高い信頼性で刺激をコード化するのかを調べるために、われわれは単細胞のCa2+画像法と、イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)の形成を刺激する受容体によって誘発されるCa2+スパークの数理解析を併用した。この解析により、細胞全体レベルで作動するCa2+スパイクのフィードバック阻害からの緩やかな回復によってシグナル・ノイズ比が改善されることと、それらがシグナル伝達経路の混乱に対して左右されないことが明らかになった。細胞ごとにCa2+スパイク頻度のばらつきがあるにもかかわらず、刺激強度の段階は、すべての細胞内で同一因子によって確率論的なスパイク間隔に変化を生じさせた。この倍率変化によって刺激強度の変化は高い信頼性でコード化され、結果的に平均スパイク間隔は刺激強度に指数関数的な依存を示した。ランダムさや細胞間のばらつきがあってもCa2+スパイクが細胞集団内で信頼性の高いシグナル伝達を可能にするのは、グローバルフィードバックがノイズを軽減し、確率論的なスパイク間隔の倍率変化によって刺激強度の変化が表現されるからであるとわれわれは結論づける。

K. Thurley, S. C. Tovey, G. Moenke, V. L. Prince, A. Meena, A. P. Thomas, A. Skupin, C. W. Taylor, M. Falcke, Reliable Encoding of Stimulus Intensities Within Random Sequences of Intracellular Ca2+ Spikes. Sci. Signal. 7, ra59 (2014).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

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