生理学
うつ病を追いだす

Physiology
Muscling Out Depression

Editor's Choice

Sci. Signal., 7 October 2014
Vol. 7, Issue 346, p. ec274
DOI: 10.1126/scisignal.2005996

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Z. Agudelo, T. Femenía, F. Orhan, M. Porsmyr-Palmertz, M. Goiny, V. Martinez-Redondo, J. C. Correia, M. Izadi, M. Bhat, I. Schuppe-Koistinen, A. T. Pettersson, D. M. S. Ferreira, A. Krook, R. Barres, J. R. Zierath, S. Erhardt, M. Lindskog, J. L. Ruas, Skeletal muscle PGC-1α1 modulates kynurenine metabolism and mediates resilience to stress-induced depression. Cell 159, 33–45 (2014). [PubMed]

要約 うつ病は異種性の気分障害である。関連する特徴として、神経伝達物質であるグルタミン酸とその代謝物キヌレニンの増加があり、そのいずれもストレスにより引き起こされ、さらに神経損傷につながる可能性がある。うつ病またはストレスのある多くの人々には、身体運動が治療的に働く。持久運動中の骨格筋活動はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)-γ共役因子1-α1(PGC1-α1)を活性化している。Agudeloらは運動の抗うつ作用の根底にある分子機構を検討した。野生型マウスまたはストレスを与えなかったコホートに比べ、慢性軽度ストレスに曝された骨格筋特異的PGC1-α過剰発現マウス(mck-PGC1-α1マウス)は、うつ様行動およびシナプスタンパク質の異常な存在量を示す確率が低かった。慢性軽度ストレスに曝されたmck-PGC1-α1マウスは野生型マウスに比べ、視床下部におけるストレス関連コルチコトロピン放出ホルモンの産生が少なく、ストレスを与えた野生型マウスのみで、視床下部における炎症促進性サイトカイン並びにマクロファージとミクログリア活性のマーカーの量が増加していた。
ストレスを与えなかったまたはストレスを与えた野生型もしくはmck-PGC1-α1マウスを組織マイクロアレイ解析および血清分析したところ、ストレスを与えた野生型マウスのみで、骨格筋のキヌレニン経路にある律速酵素、血漿中キヌレニンおよび脳内キヌレニン代謝物の存在量が増加していた。一方、ストレスを与えたmck-PGC1-α1のみで、骨格筋および血漿中のキヌレニンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)の存在量が増加していた。KATは、キヌレニンからキヌレン酸(キヌレニンと異なり血液脳関門を通過できない)への変換を触媒する。PGC1-α1を過剰発現している筋管では、KAT転写物の存在量が増加していた。KAT1KAT3およびKAT4遺伝子座周辺のゲノム領域は、PGC1-α1転写パートナーであるPPAR-αおよびPPAR-δの結合エレメントを多く含んでいる。クロマチン免疫沈降法から、mck-PGC1-α1マウスではKAT転写開始部位の上流領域へのPPAR-α/δとPGC1-α1の結合が増加していることが示された。mck-PGC1-α1マウスでは野生型マウスまたはストレスを与えなかったコホートとそれぞれ比較し、PPAR-αとPPAR-δの存在量が増加し、慢性軽度ストレスに曝されたmck-PGC1-α1では一層増加していた。PPAR-αまたはPPAR-δのアゴニストは、筋管内のKAT 1およびKAT 3の存在量をPGC1-α1依存性に増加させた。回転ケージを用いた自由走行運動プログラムを8週間行った野生型マウスでは、不活動マウスに比べ、骨格筋内のKATの発現量が増加し、血漿中キヌレン酸の存在量が増加していたが、これらはいずれも運動していないmck-PGC1-α1マウスで認められた特徴であった。ヒトに3週間の運動プログラムを行い、プログラムの前後に大腿筋から生検を採取したところ、運動によってPPAR-α、PPAR-δ、PGC1-α1およびKAT 1〜4をコードする遺伝子の発現が誘導されていた。これらの所見から、ストレスに対する動物の対処に運動が役立つ機構が明らかにされた。

L. K. Ferrarelli, Muscling Out Depression. Sci. Signal. 7, ec274 (2014).

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2014年10月7日号

Editor's Choice

生理学
うつ病を追いだす

Research Article

末梢性疼痛はGタンパク質を介したT型カルシウムチャネルの刺激を通してインスリン様増殖因子1によって増強される

NEDD4のチロシンリン酸化はそのユビキチンリガーゼ活性を活性化する

β2インテグリンによって刺激されるシグナル伝達ネットワークが細胞傷害性細胞における溶解性顆粒の極性化を促進する

Perspectives

IGF-1の道理:インスリン様成長因子受容体の活性化はT型カルシウムチャネル活性の亢進によって痛みを増大させる

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