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生理学
毒がインスリンショックを誘導

Physiology
Venom induces insulin shock

Editor's Choice

Sci. Signal., 27 January 2015
Vol. 8, Issue 361, p. ec19
DOI: 10.1126/scisignal.aaa7481

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

H. Safavi-Hemami, J. Gajewiak, S. Karanth, S. D. Robinson, B. Ueberheide, A. D. Douglass, A. Schlegel, J. S. Imperial, M. Watkins, Pradip K. Bandyopadhyay, M. Yandell, Q. Li, A. W. Purcell, R. S. Norton, L. Ellgaard, B. M. Olivera, Specialized insulin is used for chemical warfare by fish-hunting cone snails. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 10.1073/pnas.1423857112 (2015). [PubMed]

要約 捕食性イモガイは、餌の捕獲や防御のために強力な毒液を用いる。多くのイモガイは、高速の毒矢を用いて餌を突き刺すが、大きな網のような突き出た口の中に飲み込む前に餌を無力化するために毒を分泌するものもいる。Safavi-Hemamiらは、餌の動きを遅らせるまたは方向を失わせるために水中に毒を放出する2種のイモガイの毒の中にインスリンホモログを見出した。トランスクリプトミクスおよびcDNAライブラリー分析から、アンボイナガイ(Conus geographus)の毒腺において3つのインスリンホモログ(Con-Ins G1、G2、およびG3)の存在が明らかになった。脊椎動物と軟体動物のインスリンは、サイズと、成熟しプロセッシングされた形のタンパク質においてジスルフィド結合を媒介する、保存されたシステイン残基の数が異なる。Con-Ins G2は他の軟体動物インスリンタンパク質に類似するが、Con-Ins G1とCon-Ins G3は、軟体動物インスリンよりも脊椎動物インスリンに似ている成熟タンパク質を産生すると予想された。cDNAライブラリーの分析から、餌を麻痺させるために毒を分泌する別種のシロアンボイナ(C. tulipa)の毒腺において脊椎動物様のインスリンが同定された。アンボイナガイ毒の質量分析から、毒中には、Con-Ins G2はどのような形も存在しないが、Con-Ins G1およびCon-Ins G3の変異体がいくつか存在し、これまでに特徴付けられたコノトキシンに典型的な翻訳後修飾と同様の修飾を有することが明らかになった。化学的に合成されたCon-Ins G1(sCon-Ins G1)は、高血糖の成体ゼブラフィッシュに注入すると血糖を低下させ、水中に添加するとゼブラフィッシュ幼生の運動活性を低下させたことから、sCon-Ins G1がえらを通して吸収されることが示された。したがって、インスリンは、毒液に含まれる神経毒と共に、アンボイナガイおよびシロアンボイナによる餌の捕獲に寄与すると考えられる。武器化されたインスリンは、大部分の脊椎動物インスリンよりも小さく、脊椎動物のインスリンシグナル伝達の微調節に重要な配列と相同な配列が欠失していることから、低血糖の誘導に特化していることが示唆される。これらの強力な形のインスリンは、可能性のある糖尿病の治療法として検討されうる。

A. M. VanHook, Venom induces insulin shock. Sci. Signal. 8, ec19 (2015).

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