鉄欠乏時の根の応答

Roots respond when the iron is not

Editor's Choice

Sci. Signal. 26 Apr 2016:
Vol. 9, Issue 425, pp. ec96
DOI: 10.1126/scisignal.aaf9342

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. Wild, J.-M. Davière, T. Regnault, L. Sakvarelidze-Achard, E. Carrera, I. L. Diaz, A. Cayrel, G. Dubeaux, G. Vert, P. Achard, Tissue-specific regulation of gibberellin signaling fine-tunes Arabidopsis iron-deficiency responses. Dev. Cell 37, 190–200 (2016). [PubMed]

N. von Wirén, M. J. Bennett, Crosstalk between gibberellin signaling and iron uptake in plants: An Achilles’ heel for modern cereal varieties? Dev. Cell 37, 110–111 (2016). [PubMed]

要約  鉄欠乏は植物の成長を阻止する。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、転写因子FITがbHLH38またはbHLH39とヘテロ二量体化し、鉄獲得に関与する遺伝子の発現を促進する。植物ホルモンのジベレリン酸(GA)は、いくつかのbHLHファミリー転写因子の活性を調節することによって成長を阻止する核内タンパク質DELLAの分解を引き起こすことによって、成長を促進させる。Wildらは、5つのDELLAホモログすべてを欠失させたシロイヌナズナの変異体では、野生型植物に比べて、鉄欠乏に応答する根の成長阻害が軽減されることを示した。鉄欠乏はシロイヌナズナの実生によるGAの産生量を減少させ、根の成長点にDELLAタンパク質RGAを蓄積させる。5つのシロイヌナズナDELLAはいずれも、酵母ツーハイブリッドアッセイにおいて、またベンサミアナタバコ(Nicotania benthamania)で共発現させた場合にも、FIT、bHLH38、bHLH39と相互作用した。RGAはFITのDNA結合ドメインと相互作用し、ヘテロ二量体FIT-bHLH38、FIT-bHLH39の結合を減少させ、FITに依存したレポーター遺伝子の発現を減少させた。鉄欠乏は根の成長点のRGAを安定化させたが、鉄欠乏状態で成長した場合、鉄の取り込みを媒介する根の上皮細胞において、RGA量が減少し、FIT量が増加した。GAシグナル伝達に応答して分解されることのないDELLAタンパク質GAI変異体を根の表皮で異所的に発現させると、鉄欠乏に応答するFIT標的遺伝子の発現が減少し、鉄の蓄積も減少したが、鉄欠乏に応答する根の伸長には影響しなかった。鉄欠乏が根の表皮のRGAを不安定化させる機構は特定されなかったが、今回の結果は、鉄欠乏に対するDELLAの応答の細胞特異的な差を明示している。von WirénとBennettによる解説では、根の伸長の阻害が鉄欠乏に対する応答にとって重要だと考えられる理由と、今回の知見を食用作物の微量栄養量の強化に応用できる可能性のある方法について取り上げている。

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