乳幼児の失明を防ぐ

Preventing infant blindness

Editor's Choice

Sci. Signal. 10 May 2016:
Vol. 9, Issue 427, pp. ec108
DOI: 10.1126/scisignal.aag0791

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

G. Hoppe, S. Yoon, B. Gopalan, A. R. Savage, R. Brown, K. Case, A. Vasanji, E. R. Chan, R. B. Silver, J. E. Sears, Comparative systems pharmacology of HIF stabilization in the prevention of retinopathy of prematurity. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113 E2516–E2525(2016). [PubMed]

早産児が生存するためには酸素が必要であるが、この治療は発達中の網膜や肺などの組織損傷も引き起こす。網膜では高酸素症が血管構造の喪失および病的血管新生を引き起こし、結果として未熟児網膜症(ROP)が生じる。低酸素刺激性転写因子HIF-1αの発現低下を抑制する薬物が、早産児における酸素補給の毒性作用を阻止するかが検討されている。Hoppeらはマウスを用い、主に肝臓内でHIF-1αを安定化させ、血管新生および赤血球の生成を促進する成長因子の分泌を刺激するジメチルオキサリルグリシン(DMOG)と、Roxadustatを比較した。いずれの薬物も全身性に投与されたとき、酸素誘発性網膜症からマウスを保護した。肝臓内で各薬物により生成される転写シグネチャーは約50%(127/250)の重複を示し、多くの遺伝子(98/250)はDMOGにのみ反応した。分泌産物をコードする転写産物の解析から多くの類似性が示され、それには網膜保護を促進することができる数種のヘパトカインが含まれた。網膜内でDMOGにより誘発された転写の変化(5つの転写産物のみが変化していた)と比べ、Roxadustatは多くの転写の変化を引き起こし、その32のうち2つの産物はDMOGと共通で、32のうち27の産物はRoxadustatに固有のものであった。肝臓Hif1a欠損マウスを用いた実験から、DMOGの全身投与は主に肝臓を標的として酸素誘発性網膜症からの保護をもたらすことが示された。一方でRoxadustatは肝特異的Hif1aノックアウトマウスを酸素誘発性網膜症から保護したことから、Roxadustatは網膜を直接標的としたことが示された。Roxadustatは酸素誘発性損傷から肺も保護した。薬物動態および用量反応解析からRoxadustatはDMOGに比べ効力が高いことが示され、これはRoxadustatが肝依存性作用と他の組織への直接作用の両方を示すためと考えられた。このように、酸素補給を必要とする早産児には、Roxadustatの間欠的投与(例えば週1回注射)が有益である可能性がある。

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