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新たなつながり:複雑なデータセットで発見をする

New connections: Making discoveries in complex data sets

Editor's Choice

Sci. Signal. 07 Jun 2016:
Vol. 9, Issue 431, pp. ec132
DOI: 10.1126/scisignal.aag2863

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Z. Chitforoushzadeh, Z. Ye, Z. Sheng, S. LaRue, R. C. Fry, D. A. Lauffenburger, K. A. Janes, TNF-insulin crosstalk at the transcription factor GATA6 is revealed by a model that links signaling and transcriptomic data tensors. Sci. Signal. 9, ra59 (2016). [Abstract]

J. J. Gierut, L. B. Wood, K. S. Lau, Y.-J. Lin, C. Genetti, A. A. Samatar, D. A. Lauffenburger, K. M. Haigis, Network-level effects of kinase inhibitors modulate TNF-α–induced apoptosis in the intestinal epithelium. Sci. Signal. 8, ra129 (2015). [Abstract]

I. F. Tsigelny, V. L. Kouznetsova, D. E. Sweeney, W. Wu, K. T. Bush, S. K. Nigam, Analysis of metagene portraits reveals distinct transitions during kidney organogenesis. Sci. Signal. 1, ra16 (2008). [Abstract]

要約  細胞は決して、一度に1つのシグナルのみに曝されるわけではない。細胞は、成長因子や栄養素、サイトカイン、ホルモンの動的に変化する複雑な環境に浸されており、このことが、細胞調節の研究に莫大な複雑さをもたらす。この状況の複雑さは、大規模で複雑かつ多様なデータセットにおいて意味を見出すためには、計算論的手法が必要であることを意味する。Chitforoushzadehらは、テンソルと呼ばれる多次元の要素としてデータ構造を維持する、「テンソル部分最小二乗回帰」と呼ばれる統計学的モデリング手法を用いた。トランスクリプトームおよびプロテオーム(シグナル伝達タンパク質の存在量、リン酸化状態、活性)データを、テンソルモデリングにより評価し、成長因子であるインスリンとEGFによるシグナル伝達が、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子–α(TNF-α)のシグナル伝達と統合される仕組みを検討した。この分析により、TNF-αの標的遺伝子の発現をインスリンが阻害することを可能にする、転写因子GATAの長鎖型に特異的なリン酸化事象が明らかになった。Gierutらも、この場合はさまざまなキナーゼ阻害薬で前処理した後にTNF-αを投与したマウスの腸上皮における細胞死誘導という前後関係で、TNF-αシグナル伝達を検討した。目的は、さまざまなリン酸化依存性シグナル伝達事象が、細胞生存またはアポトーシスに関与する仕組みに関する知見を得ることであった。予想外なことに、同じキナーゼを同等の効率で標的とする阻害薬が、TNF-α誘導性アポトーシスに異なる影響を及ぼした。予期せぬ分子生存シグナルを明らかにするために用いられた数学的手法は、判別部分最小二乗回帰(D-PLSR)分析とMonte Carloサブサンプリング、続いて自己組織化マップ(SOM)のクラスター分析であった。この分析により、通常は細胞生存を促進するキナーゼAktが、細胞死応答を増強するマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害薬の存在によってネットワークが変化した場合には、TNF-α誘導性アポトーシスを増加させることが明らかになった。SOM分析は、Tsigelnyらが、腎臓発生段階間の遷移を統合する遺伝子の解明に用いた手法であった。30,000個を超える遺伝子を、メタ遺伝子と呼ばれる650個のグループに集め、SOMおよびエントロピー分析を行うことにより、著者らは、メタ遺伝子によって定義される段階と、形態計測パラメータおよび特異的遺伝子ネットワークとの相関性を明らかにし、結果として、腎臓発生過程に関与する既知および未知の遺伝子を同定した。これら3件の研究では、検証可能な予測を生み出し、細胞調節ネットワークの複雑さに関する知見をもたらす、計算論的手法の力が明らかにされている。

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2016年6月7日号

Editor's Choice

新たなつながり:複雑なデータセットで発見をする

Research Article

非古典的BMP II型受容体シグナル伝達の増強が脆弱X症候群のシナプス異常を媒介する

シグナル伝達とトランスクリプトミクスデータテンソルを関連付けるモデルによって転写因子GATA6におけるTNF-インスリン間のクロストークが明らかに

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