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グルタミン酸を放出してHIF-1αを安定化させる

Releasing glutamate to stabilize HIF-1α

Editor's Choice

Sci. Signal. 12 Jul 2016:
Vol. 9, Issue 436, pp. ec158
DOI: 10.1126/scisignal.aah5199

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. J. Briggs, P. Koivunen, S. Cao, K. M. Backus, B. A. Olenchock, H. Patel, Q. Zhang, S. Signoretti, G. J. Gerfen, A. L. Richardson, A. K. Witkiewicz, B. F. Cravatt, J. Clardy, W. G. Kaelin Jr., Paracrine induction of HIF by glutamate in breast cancer: EglN1 senses cysteine. Cell 166, 126–139 (2016). [PubMed]

要約  転写因子HIF-1αは、低酸素状態に対する適応応答を仲介する。酸素の存在下では、EglNファミリーの酵素を介する、プロリルヒドロキシル化と呼ばれるHIF-1αの翻訳後修飾が引き起こされる。プロリルヒドロキシル化によりHIF-1αは分解され、正常酸素条件下ではその存在量が低く保たれる。異常に安定化されたHIF-1αは、さまざまな種類の固形腫瘍、たとえばトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などの進行を促進する。Briggsらは、免疫組織化学的解析によって、TNBC組織マイクロアレイにおいてHIF-1α存在量が増加していることを見出した。それに応じて、TNBCでは、他の種類の乳がんと比べて、HIF-1α標的遺伝子の発現が増加していた。新たに播種したTNBC細胞株を正常酸素条件下で培養すると、HIF-1α存在量は、初期には低く、低酸素曝露によって増加したことから、正常酸素条件下でHIF-1αを分解の標的にする経路が作動していることが示唆された。正常酸素条件下で培養したTNBC細胞株では、HIF-1αの蓄積が時間とともに増加したが、別の種類の乳がんに由来する細胞株では、そのような増加は認められなかった。TNBC細胞株で馴化された培地を用いた実験では、HIF-1αの異常な安定化のためには分泌因子が必要であり、その因子が、HIF-1αのプロリルヒドロキシル化を減少させることが示された。TNBC細胞で馴化された培地の分析によって、TNBCはL-グルタミン酸を分泌することが明らかになり、TNBCだけでなく、複数のがん細胞種において、L-グルタミン酸の投与によりHIF-1α存在量が増加した。L-グルタミン酸は、xCTシスチン‐グルタミン酸アンチポーターによって培地中に放出され、細胞外のL-グルタミン酸が蓄積すると、xCTアンチポーターの活性が阻害され、細胞内シスチンおよびシステイン濃度が低下し、細胞内グルタミン酸濃度が上昇した。EglN1は、酸化条件下でシステイン残基の可逆的酸化を介して自己不活性化する傾向をもつ酵素ファミリーに属し、そのような自己不活性化は、細胞内システインが減少したときに生じると考えられる。In vitroアッセイでは、システインがEglN1の活性を上昇させることが示された。一方、システイン濃度が低下すると、EglN1の特異的システイン残基が酸化され、不活性化された。このように、TNBCによって放出されるグルタミン酸が、EglN酵素の不活性化を介して、正常酸素条件下でHIF-1αを安定化させる。

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2016年7月12日号

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