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遊走性好中球をROSで停止させる

Arresting migrating neutrophils with ROS

Editor's Choice

Sci. Signal. 04 Oct 2016:
Vol. 9, Issue 448, pp. ec226
DOI: 10.1126/scisignal.aal1285

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

G. Wang, L. Cao, X. Liu, N. A. Sieracki, A. Di, X. Wen, Y. Chen, S. Taylor, X. Huang, C. Tiruppathi, Y.-y. Zhao, Y. Song, X. Gao, T. Jin, C. Bai, A. B. Malik, J. Xu, Oxidant sensing by TRPM2 inhibits neutrophil migration and mitigates inflammation. Dev. Cell 38, 453–462 (2016). [PubMed]

J. Renkawitz, M. Sixt, A radical break: Restraining neutrophil migration. Dev. Cell 38, 448–450 (2016). [PubMed]

要約  好中球は、感染部位や損傷部位に達すると同時に遊走を止めて炎症反応を開始させなければならず、そのような炎症反応の1つには活性酸素種(ROS)の産生が関連している。TRPM2は、炎症反応に関連するカチオンチャネルであり、ROSによって活性化しうる。Wangらは、遊走性好中球におけるTRPM2の役割を決定した。細菌性分子リポ多糖(LPS)投与後サイトカインの腫瘍壊死因子α(TNF-α)の処理により引き起こした皮膚損傷部において、Trpm2–/–マウスでは、野生型マウスよりも強い炎症反応が誘導され、より多くの好中球が蓄積された。同様に、気管内に細菌性ホルミルペプチド[fMet-Leu-Phe(fMLF)]を注入したところ、これに応答して両肺に蓄積された好中球の量は、Trpm2–/–マウスのほうが野生型マウスよりも多かった。野生型好中球に比べて、Trpm2–/–好中球では、補体成分C5aやインターロイキン8などの誘引物質の勾配だけでなくホルミルMet-Ile-Phe-Leu(fMILF)の勾配に応答した定方向の遊走も亢進された。Trpm2–/–好中球で亢進されるfMILF勾配に応答する定方向の遊走にはTRPM2のチャネル機能は必要なく、Ca2+シグナル伝達の変化も関与していなかった。野生型好中球では、fMLFによってfMLF受容体であるFPR1の内部移行が誘導されたが、予測どおり、Trpm2–/–好中球では誘導されなかった。FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)解析では、刺激されていない細胞において過剰発現されたFPR1とTRPM2は細胞膜上に共存していること、fMLFで刺激するとFPR1とTRPM2の細胞質への移行が引き起こされるが、この作用にはROS産生とTRPM2のCys549が必要であることが示された。質量分析では、精製TRPM2をH2O2に曝露させるとCys549が二重三重に酸化されることが示された。HL60細胞(ヒト前骨髄球性白血病細胞株)でC549A変異型TRPM2を過剰発現させると、野生型TRPM2を発現するHL60細胞に比べて、遊走が亢進された。このように、TRPM2のCys549がROSに媒介されて酸化されると、誘因物質シグナルに応答するこの修飾型TRPM2と受容体の両方の内部移行が引き起こされ、結果的に好中球の遊走が減弱されるようである。これにより、遊走性好中球の遊走から炎症反応の生成への切り替えが可能になっている可能性がある。付随する論評では、RenkawitzとSixtが、炎症によって引き起こされる局所的な組織損傷の大部分でROSが発生するのだから、ROSは炎症を減弱させるには魅力的な自動調節機構であると指摘している。

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2016年10月4日号

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