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新たなつながり:悪いところを除いて良いところを手に入れる

New connections: Getting the good without the bad

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 452, pp. ec253
DOI: 10.1126/scisignal.aal2971

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. Finan, C. Clemmensen, Z. Zhu, K. Stemmer, K. Gauthier, L. Müller, M. De Angelis, K. Moreth, F. Neff, D. Perez-Tilve, K. Fischer, D. Lutter, M. A. Sánchez-Garrido, P. Liu, J. Tuckermann, M. Malehmir, M. E. Healy, A. Weber, M. Heikenwalder, M. Jastroch, M. Kleinert, S. Jall, S. Brandt, F. Flamant, K.-W. Schramm, H. Biebermann, Y. Döring, C. Weber, K. M. Habegger, M. Keuper, V. Gelfanov, F. Liu, J. Köhrle, J. Rozman, H. Fuchs, V. Gailus-Durner, M. Hrabě de Angelis, S. M. Hofmann, B. Yang, M. H. Tschöp, R. DiMarchi, T. D. Müller, Chemical hybridization of glucagon and thyroid hormone optimizes therapeutic impact for metabolic disease. Cell 167, 843–857 (2016). [PubMed]

A. Saghatelian, B. Cravatt, Glucagon and thyroid hormone: A championship team. Cell 167, 604–605 (2016). [PubMed]

Z. Madak-Erdogan, S. H. Kim, P. Gong, Y. C. Zhao, H. Zhang, K. L. Chambliss, K. E. Carlson, C. G. Mayne, P. W. Shaul, K. S. Korach, J. A. Katzenellenbogen, B. S. Katzenellenbogen, Design of pathway preferential estrogens that provide beneficial metabolic and vascular effects without stimulating reproductive tissues. Sci. Signal. 9, ra53 (2016). [Abstract]

要約

   多くの受容体は複数の組織や臓器に存在するため、内因性リガンドの合成型または設計されたリガンドにより受容体を標的とすることは、危険な副作用のリスクを伴う治療戦略である。Finanら(SaghatelianとCravattも参照)は、グルカゴンと甲状腺ホルモン(T3)を結合させると、いずれかのホルモンを単独で投与した場合の代謝への効果が得られる一方で、各ホルモンの副作用が弱まることを見出した。グルカゴンとT3 は、肝臓と白色脂肪組織に作用し、脂質異常症を抑制する。脂質異常症とは、コレステロールまたはトリグリセリド(あるいは両方)の血中濃度が異常に高いことを指し、いくつかの代謝疾患の病因に関与している。食餌によりまたは遺伝学的に誘発された代謝疾患を有するマウスにおいて、グルカゴン/T3結合体は、脂質異常症を軽減し、脂肪肝を防止し、さらにはグルカゴンまたはT3単独で体重を減少させるために必要な用量よりも低い用量で体重減少を誘導した。T3と同様に、結合体は全身のエネルギー消費量を増加させたが、T3単独投与の場合に生じる過食(栄養過剰)は引き起こさなかった。脂質異常症を軽減し、体重減少を誘導し、エネルギー消費量を増加させるグルカゴン/T3結合体の能力には、結合体が最も多く集積する組織である肝臓における、グルカゴン受容体の存在と甲状腺ホルモン受容体βの存在が必要であった。グルカゴンと異なり、グルカゴン/T3 結合体は、グルコース処理を増強し、糖新生は増加させなかった。また、T3と異なり、結合体は心肥大や心機能障害などの心血管系副作用を引き起こさなかった。

グルカゴンおよびT3と同様に、現在利用可能なエストロゲン療法には望ましくない副作用がある。Madak-Erdoganらは、構造情報を用いて、受容体親和性を低下させたエストロゲン様分子を設計し、これらの分子が、生殖組織である乳房または子宮組織において、細胞増殖を刺激することによりがんを引き起こす能力を制限した。これらの分子は、卵巣摘出マウスにおいて、損傷後の血管の修復を促進し、肝臓および白色脂肪組織の代謝を改善した一方、乳管の乳腺分岐(乳腺増殖の徴候)を引き起こすことや、子宮重量を増加させることはなかった。これらの研究からは、もとのリガンドよりも副作用が少なくなるように、内因性リガンドを修飾すること、または合成型を設計することが可能であることが示されている。

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2016年11月1日号

Editor's Choice

新たなつながり:悪いところを除いて良いところを手に入れる

Research Article

心血管系の老化と疾患においてGPERが担う必須の役割

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