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NIKがミトコンドリアを先端に送る

NIK sends mitochondria to the periphery

Editor's Choice

Sci. Signal. 03 Jan 2017:
Vol. 10, Issue 460,
DOI: 10.1126/scisignal.aam6493

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J.-U. Jung, S. Ravi, D. W. Lee, K. McFadden, M. L. Kamradt, L. G. Toussaint, R. Sitcheran, NIK/MAP3K14 regulates mitochondrial dynamics and trafficking to promote cell invasion. Curr. Biol. 26, 3288-3302(2016). doi:10.1016/j.cub.2016.10.009pmid:27889261
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要約

核因子κB(NF-κB)誘導キナーゼ(NIK)は、非標準NF-κBシグナル伝達を刺激することによって免疫において機能する構成的活性型キナーゼである。また、NIKは腫瘍の発生・転移とも関連付けられている。Jungらは、さまざまな種類の浸潤性がんで観察されている、ミトコンドリアが遊走性がん細胞の最先端へ移動する現象が、NIKによって促進されることを見出した。NIKは、培養グリオーマ、培養乳がん、培養膵がん、患者由来のグリオーマ検体、マウス胚線維芽細胞(MEF)において、細胞質全体および細胞質突起に存在するミトコンドリアに局在した。培養BT25グリオーマ細胞では、ミトコンドリアは細胞体全体および細胞質突起に分布し、大部分は細胞先端に向かう順行性の動きを呈した。これらの細胞でNIKをコードする遺伝子を欠損させると、ミトコンドリアは核周囲に分布し、方向性のある動きを呈さなかった。さらに、これらNIK欠損細胞では、コラーゲン基質への浸潤の減少も認められた。NIKを過剰発現させると、浸潤もミトコンドリアの細胞質突起への局在も促進された。NIKはミトコンドリア外膜に局在し、ミトコンドリアの分裂を促進するダイナミン関連GTPアーゼDrp1のミトコンドリア外膜への動員に必須であった。ミトコンドリア上のNIKの存在量は、活性型Drp1の存在量と相関し、Drp1を欠損させると、BT25細胞のコラーゲン基質へのサイトカイン誘導性浸潤が減少した。非標準NF-κBシグナル伝達においてNIKの下流で機能するIκBキナーゼIκB(IKKα)は、BT25細胞または患者由来グリオーマ検体において、Drp1と会合せず、MDFの浸潤性を促進するNIKの能力にも必須ではなかった。著者らは、Drp1がNIKの直接の標的かどうかは明らかにしていないが、今回の結果は、ミトコンドリアに局在するNIKが、ミトコンドリアの細胞先端への移動を促進し、Drp1に依存するがNF-κBシグナル伝達とは独立した方法で浸潤性を促進することを示している。

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2017年1月3日号

Editor's Choice

NIKがミトコンドリアを先端に送る

Editorial Guides

2016:シグナル伝達の「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」

Research Article

SCFβ-TRCP E3ユビキチンリガーゼ複合体はLipin1をユビキチン化および分解の標的にして肝脂肪合成を促進する

チロシンキナーゼSrcはキナーゼTBK1のリン酸化を進めウイルス感染後のI型インターフェロン産生を促進する

受容体チロシンキナーゼAXLが上皮増殖因子受容体の核移行を媒介する

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