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受容体チロシンキナーゼAXLが上皮増殖因子受容体の核移行を媒介する

The receptor tyrosine kinase AXL mediates nuclear translocation of the epidermal growth factor receptor

Research Article

Sci. Signal. 03 Jan 2017:
Vol. 10, Issue 460,
DOI: 10.1126/scisignal.aag1064

Toni M. Brand1, Mari Iida1, Kelsey L. Corrigan1, Cara M. Braverman1, John P. Coan1, Bailey G. Flanigan1, Andrew P. Stein1, Ravi Salgia2, Jana Rolff3, Randall J. Kimple1, and Deric L. Wheeler1,*

1 Department of Human Oncology, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health, 1111 Highland Avenue, Madison, WI 53705, USA.
2 Department of Medical Oncology and Therapeutics Research, City of Hope Comprehensive Cancer Center, 1500 East Duarte Road, Duarte, CA 91010, USA.
3 Experimental Pharmacology and Oncology Berlin-Buch GmbH, Robert-Roessle-Str. 10, 13125 Berlin, Germany

* Corresponding author. Email: dlwheeler@wisc.edu

要約

上皮増殖因子受容体(EGFR)は種々のがんを有する患者における治療標的である。しかし残念ながら、EGFRを標的とする治療薬への耐性は高頻度に認められる。従来の研究から、EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブには2つの耐性機序が特定されている。1つは、EGFRの核移行がセツキシマブの阻害作用を迂回するというもので、もう1つは、受容体チロシンキナーゼであるAXLがEGFRの活性化および下流のシグナル伝達を維持することでセツキシマブの耐性を媒介している、というものである。そこでわれわれは、セツキシマブ耐性においてAXLがEGFRの核移行を媒介しているという仮説を立てた。培養系およびマウスにおける患者由来の異種移植片において、非小細胞肺がんのセツキシマブ耐性クローンではAXLおよび核内EGFR(nEGFR)の存在量が増加していた。細胞分画解析、超解像度顕微鏡法および電子顕微鏡法から、AXLの遺伝的欠損によりnEGFRの蓄積が減少することが明らかにされた。SRCファミリーキナーゼ(SFK)およびHERファミリーリガンドはEGFRの核移行を促進した。われわれは、AXLをノックダウンすると、SFKファミリーメンバーであるYESおよびLYN、ならびにリガンドであるニューレグリン-1(NRG1)をコードしている遺伝子の発現が低下することを見出した。またAXLをノックダウンすると、EGFRと関連受容体HER3との相互作用が低下し、核内のHER3の蓄積も減少した。AXLを除去した細胞では、LYNおよびNRG1の過剰発現によりnEGFRの蓄積が生じ、AXLの欠如により誘導される欠損が回復した。まとめると、これらのデータから、これまで認識されていなかったEGFRの核移行の調節におけるAXLの役割が明らかになり、AXLを介したSFKおよびNRG1の発現がこのプロセスを促進することが示唆された。

Citation: T. M. Brand, M. Iida, K. L. Corrigan, C. M. Braverman, J. P. Coan, B. G. Flanigan, A. P. Stein, R. Salgia, J. Rolff, R. J. Kimple, D. L. Wheeler, The receptor tyrosine kinase AXL mediates nuclear translocation of the epidermal growth factor receptor. Sci. Signal. 10, eaag1064 (2017).

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