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脆弱X症候群における食作用の欠損
Impaired phagocytosis in fragile X
Sci. Signal. 04 Apr 2017:
Vol. 10, Issue 473, eaan3520
DOI: 10.1126/scisignal.aan3520
Alexandra A. Mushegian
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
R. M. O'Connor, E. F. Stone, C. R. Wayne, E. V. Marcinkevicius, M. Ulgherait, R. Delventhal, M. M. Pantalia, V. M. Hill, C. G. Zhou, S. McAllister, A. Chen, J. S. Ziegenfuss, W. B. Grueber, J. C. Canman, M. M. Shirasu-Hiza,A Drosophila model of Fragile X syndrome exhibits defects in phagocytosis by innate immune cells. J. Cell Biol. 216, 595-605 (2017).
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ハエ脆弱X症候群モデルの神経学的症状と免疫学的症状の根底には食作用の欠損がある。
要約
自閉症スペクトラム症は、多様な免疫症状と疫学的に関連している。脆弱X症候群は、単一遺伝子疾患だが、自閉症の症状と他の知的障害の症状を併発するほか、炎症性サイトカイン産生を亢進して炎症も引き起こす。脆弱X症候群では、変異によって、mRNA結合タンパク質FMR1をコードするFMR1遺伝子が抑制されている。FMR1は全身に存在するが、とくに神経細胞に多く存在する。O'Connorらは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において、FMR1が免疫系の血球による感染性細菌の貪食にも、脳内の貪食グリア細胞による軸索剪定にも必要であることを見出した。Fmr1変異によってFMR1が欠損し、記憶と行動に神経学的異常が生じたハエを、複数の病原性細菌に曝露させたところ、変異型のハエでは、野生型のハエよりも急速に肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)と霊菌(Serratia marcescens)が増殖し、ハエを死に至らせたが、抗菌ペプチドをコードする遺伝子の感染に応答した発現には、変異型と野生型のハエで差は認められなかった。FMR1を欠損させると、血球による細菌貪食が減少した。この異常は、血球特異的なRNA干渉によるFmr1ノックダウン後にも発生し、Fmr1補完によって回復した。FMR1に媒介される食作用の脳での役割を決定するために、著者らは、嗅覚受容神経の軸索を切断した。通常はこの処置によって、被覆グリア細胞による貪食が引き起こされ、細胞残屑は除去される。しかし、Fmr1変異型のハエでは、切断された神経細胞は除去されなかった。さらに、Fmr1変異型のハエでは、学習と記憶を司る脳構造であるキノコ体でも胚発生中の軸索剪定に遅延がみられた。このように、食作用の調節におけるFMR1の保存された役割が、脆弱X症候群の神経機能への影響にも免疫機能への影響にも寄与している可能性がある。この機構が他のタイプの自閉症スペクトラム症を有するヒト患者でも保存されているとすれば、食作用を若年期の自閉症スペクトラム症のバイオマーカーとして使用できる可能性がある。