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神経膠芽腫の治療に近づく

A link closer to glioblastoma therapy

Editors' Choice

Sci. Signal. 04 Apr 2017:
Vol. 10, Issue 473, eaan3515
DOI: 10.1126/scisignal.aan3515

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Q. Fan, O. Aksoy, R. A. Wong, S. Ilkhanizadeh, C. J. Novotny, W. C. Gustafson, A. Y.-Q.Truong, G. Cayanan, E. F. Simonds, D. Haas-Kogan, J. J. Phillips, T. Nicolaides, M.Okaniwa, K. M. Shokat, W. A. Weiss, A kinase inhibitor targeted to mTORC1 drives regression in glioblastoma. Cancer Cell 31, 424-435 (2017).
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次世代のmTOR阻害剤はその前世代の阻害剤の特長を併せ持ち、マウスにおける神経膠芽腫の増殖を強力かつ持続的に阻害する。

要約

神経膠芽腫(GBM)は高悪性度の脳腫瘍であり、一般に、PI3K-AKT-mTORキナーゼ経路によるシグナル伝達を活性化または亢進を可能にする変異を伴っている。しかし、この経路を標的にする現在の薬理学的阻害剤は、GBM患者におけるmTOR活性を持続的に抑制することができない。Fanらは、RapaLink-1と呼ばれる新たなmTORキナーゼ阻害剤がGBMのマウスモデルにおいて、腫瘍退縮を誘発することを見出した。RapaLink-1は第二世代のオルソステリック阻害剤と、mTOR複合体1(mTORC1)を標的とする第一世代のアロステリック阻害剤であるラパマイシンを結合させたものである。RapaLink-1は培養GBM細胞の増殖の抑制およびTORC1基質のリン酸化の抑制の点で、オルソステリックまたはアロステリック阻害剤単独よりも強力かつ持続的であった。これはmTOR変異(一般に患者の薬剤耐性の一因である)を発現している培養GBM細胞、細胞株由来または患者由来の異種移植片、並びに遺伝子組換えGBMモデルマウスにおいても認められた。一部のマウスにおいてRapaLink-1は腫瘍退縮を誘導し、明らかな毒性なしに生存率を改善した。臨床上、GBMにおけるPI3K-mTOR経路を標的とすることの課題は、薬剤耐性の獲得を可能にするフィードバック活性化を効率的に阻止することである。シグナル伝達ネットワークの複雑さに関するわれわれの理解が進むにつれ、標的をさらに限定した効果的な薬物の開発も進んでいる。今後検討を進めることで、持続的な治療を切望している患者や臨床医におけるこのようなニーズをこの新規のmTOR標的薬が満たすか否か、明らかになっていくであろう。

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2017年4月4日号

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神経膠芽腫の治療に近づく

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