心不全の抑制剤

Heart failure inhibitor

Editor's Choice

Sci. Signal. 11 Jul 2017:
Vol. 10, Issue 487, eaao3132
DOI: 10.1126/scisignal.aao3132

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. Tsuda, M. Takefuji, N. Wettschureck, K. Kotani, R. Morimoto, T. Okumura, H. Kaur, S. Eguchi, T.Sakaguchi, S. Ishihama, R. Kikuchi, K. Unno, K. Matsushita, S. Ishikawa, S. Offermanns, T. Murohara,Corticotropin releasing hormone receptor 2 exacerbates chronic cardiac dysfunction. J. Exp. Med. 214,1877-1888 (2017).
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心不全のマウスモデルにおいて、心筋細胞のGタンパク質共役受容体を標的にすると保護作用が得られる。

要約
多くの心血管疾患に対する治療は向上し続けているが、心不全患者は依然として予後が不良である。心不全に寄与する因子を同定するために、Tsudaらは、横行大動脈縮窄術(TAC)を受けて2週間後のマウスから分離した心筋細胞において、Gタンパク質共役受容体(GPCR)をコードする遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った。コルチコトロピン放出ホルモン受容体2(Crhr2)をコードする Crhr2 mRNAは、これらの細胞においてもっとも豊富に存在するmRNAであり、さらに、TACに反応して最大の増加を示した。TACを受けたマウスには、Crhr2アゴニストであるウロコルチン2(Ucn2)の血清濃度の上昇も認められた。対照マウスにUcn2を4週間連続投与すると、心肥大と心機能障害が発生した。これらの作用は、タモキシフェン誘導によりCrhr2を心筋細胞特異的に欠失させたマウス(cmc-Crhr2-KOマウス)では認められなかった。TACの1週間後に、対照マウスにCrhr2アンタゴニストであるantisauvagine-30を投与すると、これらのマウスは心機能障害から保護された。レポーターアッセイでは、Crhr2の刺激により、Gαs Gタンパク質が活性化され、蓄積により心毒性をもたらすセカンドメッセンジャーである、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)の産生が増加することが示された。心筋細胞のウエスタンブロット解析では、antisauvagine-30が、TAC誘発性のcAMP蓄積と下流のシグナル伝達経路の活性化を抑制することが示された。非虚血性拡張型心筋症患者では、健常者と比較して、Ucn2の血清濃度が7倍以上高かった。これらのデータを総合すると、Crhr2アンタゴニストを慢性心不全患者に対する治療薬候補として検討すべきであることが示唆される。

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2017年7月11日号

Editor's Choice

心不全の抑制剤

Research Article

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