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感染は概日リズムを変化させる

Infection alters circadian rhythm

Editor's Choice

Sci. Signal. 06 Mar 2018:
Vol. 11, Issue 520, eaat4604
DOI: 10.1126/scisignal.aat4604

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Z. Li, K. Bonaldi, F. Uribe, J. L. Pruneda-Paz, A localized Pseudomonas syringae infection triggers systemic clock responses in Arabidopsis. Curr. Biol. 28, 630-639.e4 (2018).
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細菌感染に対する応答が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の概日リズムを変化させる。

要約

概日リズムは、行動、生理機能、免疫応答などのさまざまな過程を制御する。内因性因子が、概日時計を規定する遺伝子発現パターンの振動を生み出す一方、光や温度などの外部のシグナルが、これらの振動の周期と振幅を設定する。Li らは、植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の概日時計が、病原体の感染にも応答することを見出した。シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)をシロイヌナズナの葉に局所感染させると、感染部位から離れた組織において、概日振動の振幅が減少し、周期が延長した。感染に応答して、植物はホルモンのサリチル酸(SA)を産生し、SAは活性酸素種(ROS)の産生を刺激することによって、その作用の一部を発揮する。転写因子NPR1はSA誘発性の応答を仲介するが、SA生合成を阻害する能力も有する。非感染植物をSAまたは過酸化水素の単回投与によって一過性に処理すると、病原体誘発性の概日リズムの振幅減少が再現されたが、時計の周期には影響がなかった。NPR1機能を欠損した植物では、野生型植物と比較して、SAによる処理時に概日振幅のより大きな減少が認められ、NPR1を過剰発現させると、SA処理または P. syringae 感染に応答した概日振幅の減少量が小さくなった。細胞膜と細胞壁のあいだのアポプラスト空間において特異的にROSを産生する酵素RBOHDが、感染またはSA処理に応答した概日周期の延長に関与したが、応答をすべて担ったわけではなく、その他のROS源も寄与する可能性が示唆された。この研究では、感染が植物の概日リズムを変化させる可能性が示されているだけでなく、ROSが、植物概日時計のこれまで認識されていなかった調節因子として同定されている。

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2018年3月6日号

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感染は概日リズムを変化させる

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