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病原体によって駆動される血管新生
Pathogen-driven vascularization
Sci. Signal. 30 Oct 2018:
Vol. 11, Issue 554, eaav8424
DOI: 10.1126/scisignal.aav8424
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
E. M. Walton, M. R. Cronan, C. J. Cambier, A. Rossi, M. Marass, M. D. Foglia, W. J. Brewer, K. D. Poss, D. Y. R.Stainier, C. R. Bertozzi, D. M. Tobin, Cyclopropane modification of trehalose dimycolate drives granuloma angiogenesis and mycobacterial growth through Vegf signaling. Cell Host Microbe 24, 514-525.e6 (2018).
Google Scholar
M. Uusi-Mäkelä, M. Rämet, Hijacking host angiogenesis to drive mycobacterial growth. Cell Host Microbe 24,465-466 (2018).
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マイコバクテリアの細胞壁の構成要素が肉芽腫の血管新生を刺激する。
要約
肺に侵入した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)はマクロファージによって貪食され、結核菌を貪食したマクロファージは凝集して肉芽腫を形成する。こうした構造物は病原体を局所に閉じ込め、免疫系による細菌増殖の抑止を可能にするので、宿主にとって利益であるが、結果的に潜伏感染を生む。また、肉芽腫は病原体が宿主によって完全に破壊されるのを妨げ、再活性化して活動性感染を引き起こしうる細菌の貯蔵場所となるので、病原体にとっても有益である。さらに、肉芽腫による血管新生も病原体にとって有益であり、動物モデルにおいて結核菌の増殖を促進する。結核菌を含有する肉芽腫による血管新生は、これまで肉芽腫内の低酸素のみに依存するものと考えられていたが、Waltonらは、この過程がマイコバクテリアによって能動的に促進されることを見出した。結核菌感染によってヒト肺内に形成される肉芽腫とよく似た肉芽腫を特徴とするゼブラフィッシュ幼生の結核菌感染モデルを用いて、肉芽腫の血管新生には結核菌のPcaA(proximal cyclopropane synthase of alpha-mycolates、 αミコール酸近位シクロプロパン合成酵素)が必要であることを示したのだ。PcaAは、マイコバクテリアの細胞壁に特有の長鎖脂肪酸であるαクラスのミコール酸を修飾する。ミコール酸は、脂質、なかでもマイコバクテリアの生存に不可欠なトレハロース-6,6-ジミコール酸(TDM)に組み込まれている。野生型結核菌、精製TDM、あるいは野生型結核菌由来のミコール酸含有脂質をゼブラフィッシュ幼生に注射すると、血管新生が誘導され、ヒト血管内皮増殖因子A(VEGFA)と相同である血管内皮増殖因子(VEGF)をコードするvegfaaの転写レポーターの発現も誘導された。対照的に、pcaA変異型細菌またはpcaA変異型細菌由来のミコール酸含有脂質を注射しても、血管新生やvegfaaレポーターの発現は刺激されなかった。VEGFシグナル伝達を遺伝学的または薬理学的に阻害すると、TDMによって誘導される血管新生は阻止された。pcaA変異型細菌はin vivoで増殖が抑制されたが、そのような抑制は野生型細菌との同時感染によって回復した。このように、マイコバクテリアを含有する肉芽腫による血管新生は、細菌の細胞壁の構成要素によって駆動される能動的な過程である。また、これらの知見は、肉芽腫の血管新生を妨げることによって結核の潜伏感染と闘うための標的候補を提示している(Uusi-Mäkelä and Rämet参照)。