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mTORC1はセンサーなしで作動する

mTORC1 goes sensorless

Editor's Choice

Sci. Signal. 15 Jan 2019:
Vol. 12, Issue 564, eaaw6411
DOI: 10.1126/scisignal.aaw6411

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. M. Son, S. J. Park, H. Lee, F. Siddiqi, J. E. Lee, F. M. Menzies, D. C. Rubinsztein, Leucine signals to mTORC1 via its metabolite acetyl-coenzyme A. Cell Metab. 29, 192-201.e7(2019).
Google Scholar

ある特定の種類の細胞と組織ではロイシンの代謝産物がRaptorのアセチル化を介してmTORC1を調節する。

要約

多タンパク質複合体mTORC1は、栄養豊富な状況では、細胞の成長や増殖などの同化過程を刺激する。mTORC1はロイシンなどのアミノ酸に応答してリソソームへと移行し、そこで活性化される。この移行イベントにはRag複合体が必要である。また、Sestrin2、ロイシルtRNA合成酵素、グルタミン酸脱水素酵素などいくつかのタンパク質が、mTORC1のロイシンセンサーとして提唱されている。Sonらは、特定のセンサーを伴わずにロイシンがmTORC1を活性化する機構を同定した。ロイシンは、3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ(MCCC)という酵素を含む経路を通じてアセチルCoAへと代謝される。HeLa細胞のMCCCをノックダウンさせると、mTORC1のリソソームへの移行と活性化が損なわれた。この効果は、アセチルCoAの濃度を上昇させる試薬であるDCAを添加することによって回復したが、ロイシンを添加しても回復しなかった。アミノ酸を欠乏させたHeLa細胞、SH-SY5Y神経芽腫細胞、一次ニューロン、他の細胞種では、ロイシンまたはDCAを添加するとmTORC1活性が回復した。しかし、マウス胚線維芽細胞(MEF)、HEK293細胞では、ロイシンとDCAのいずれを添加してもそのような回復は認められなかった。アミノ酸欠乏HeLa細胞において、個々のロイシンセンサーをノックダウンしても、DCAによるmTORC1活性化の回復は妨げられなかった。リジンアセチルトランスフェラーゼは標的タンパク質にアセチルCoAを付加し、なかでもリジンアセチルトランスフェラーゼEP300はmTORC1シグナル伝達を調節する。アミノ酸欠乏HeLa細胞でEP300をノックダウンするか薬理学的に阻害すると、アセチルCoAを添加してもmTORC1阻害は回復しなかった。EP300はRaptorと相互作用してそのLys1097をアセチル化したが、アミノ酸を欠乏させると、このアセチル化は減少した。この部位をアセチル化できないRaptor変異体ではRag複合体との相互作用が減少し、この変異体を発現する細胞ではmTORC1のリソソームへの動員が減少した。Raptorのアセチル化は絶食マウスの脳、肝臓、骨格筋で減少していた。このように、ある特定の種類の細胞と組織において、ロイシン由来のアセチルCoAは、Raptorのアセチル化を介してmTORC1の活性化を亢進する。著者らは、ロイシンによるmTORC1活性化の機構を描写した既公表の実験の多くは、もっぱらHEK293細胞とMEF、すなわち著者らが発見した機構をもたない種類の細胞で行われていたことを指摘している。

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2019年1月15日号

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mTORC1はセンサーなしで作動する

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