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新たなつながり:疾患におけるマクロファージを解読する

New connections: Decoding macrophages in disease

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 May 2019:
Vol. 12, Issue 582, eaax6493
DOI: 10.1126/scisignal.aax6493

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Cassetta, S. Fragkogianni, A. H. Sims, A. Swierczak, L. M. Forrester, H. Zhang, D. Y. H. Soong, T. Cotechini, P.Anur, E. Y. Lin, A. Fidanza, M. Lopez-Yrigoyen, M. R. Millar, A. Urman, Z. Ai, P. T. Spellman, E. S. Hwang, J. M.Dixon, L. Wiechmann, L. M. Coussens, H. O. Smith, J. W. Pollard, Human tumor-associated macrophage and monocyte transcriptional landscapes reveal cancer-specific reprogramming, biomarkers, and therapeutic targets. Cancer Cell 35, 588-602.e10 (2019). Google Scholar

C. Fischer, M. Metsger, S. Bauch, R. Vidal, M. Böttcher, P. Grote, M. Kliem, S. Sauer, Signals trigger state-specific transcriptional programs to support diversity and homeostasis in immune cells. Sci. Signal. 12,eaao5820 (2019). Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

疾患においてマクロファージがどのように再プログラミングされるかを読み解くことが、患者の治療改善につながるかもしれない

要約

慢性炎症および代謝ストレスは肥満の特徴であり、さらに種々の疾患の発症と進行と関連している。炎症は、マクロファージと呼ばれる免疫細胞の遺伝子発現を変化させる種々の細胞由来シグナルを伴い、マクロファージに対して免疫応答の促進やその状況への耐性の促進を誘導する。マクロファージが特定のシグナルに応答して再プログラミングされる異なる道筋を明らかにした2つの研究から、患者の予後予測および治療の改善方法が解明されるかもしれない。Cassettaらは、がんという状況におけるマクロファージの状態を検討した。がんは、一般に「腫瘍関連マクロファージ(TAM)」と呼ばれる腫瘍領域に浸潤するマクロファージに、非古典的な耐性状態を誘導することに特に長けている。著者らは乳がんまたは子宮内膜がん患者、および健康被験者からの免疫細胞を分析し、がん種特異的で、かつ組織常在性マクロファージや単球(マクロファージが由来する細胞種)の両方と異なる、TAMのトランスクリプトーム中の構成要素を同定した。これらの変化には、膜貫通型受容体、可溶性因子、転写因子、免疫制御受容体、アポトーシス促進分子および血管新生促進因子をコードする、数多くの遺伝子が含まれた。著者らは共培養を用いて、乳がんTAM特異的トランスクリプトームは腫瘍分泌性サイトカインであるコロニー刺激因子1および腫瘍壊死因子-αにより形作られ、生存率不良を予測する遺伝子発現マーカーであるSIGLEC1およびCCL8を含んでいることを発見した。ひいては、TAM中のこれらの遺伝子産物(細胞接着タンパク質であるSIGLEC1とサイトカインであるCCL8)の産生が、腫瘍細胞の運動性を促進していた。この洞察は、患者のTAMを治療標的とするための取り組みを改善するかもしれない。

炎症および代謝ストレスは、がん以外の疾患、特に2型糖尿病、慢性感染症および敗血症といった重症疾患と関連している。たとえば熱傷および慢性代謝性疾患の患者では、脂肪組織および肝臓における遊離脂肪酸とM2極性化マクロファージの存在量が亢進しており、これが創傷治癒を阻害し、疾患の進行に寄与している。Fischerらは本誌先週号において、グラム陰性菌感染に関連した「危険信号」であるリポ多糖(LPS)と、脂肪組織により産生される脂肪酸であるパルミチン酸に応答した際に、マクロファージの再プログラミングがどのように違うかを明らかにした。著者らは単一細胞解析法を用い、マクロファージはLPSに対して古典的な炎症促進性(「M1極性化」)応答を示すが、慢性的なパルミチン酸の曝露に対しては抑制性の抗炎症性(「M2極性化」)応答を示し、それぞれが特定の転写プログラムおよびシグナル伝達経路の活動と関連していることを明らかにした。パルミチン酸がメラノーマなどの腫瘍周囲の脂肪層から分泌され、そこで腫瘍増殖促進性の脂質代謝を促進して治療効果を阻害していることを踏まえると、このような所見を拡張させ、パルミチン酸の存在はTAMの再プログラミングに直接寄与している可能性があることを疑ってもよいかもしれない。まとめるとこれらの研究は、免疫細胞がその微小環境において多様なシグナルに応答してどのように再プログラミングされているかという、われわれの知識を向上させるものである。このような機構を(特に炎症および肥満という観点から)理解することは、患者に対するより良い免疫療法の開発のみならず、疾患の進行および臨床転帰における重要な要素であることがますます認識されている多細胞性の微小環境を組み入れた、より優れた疾患モデルの開発を促すかもしれない。

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2019年5月21日号

Editor's Choice

新たなつながり:疾患におけるマクロファージを解読する

Research Article

CRACチャネルはアストロサイトのCa2+シグナル伝達とグリオトランスミッター放出を制御して海馬のGABA作動性伝達を調節する

mTORC1はTGF-β1誘発性のコラーゲン生合成時にATF4依存的新規セリン-グリシン経路を増幅しグリシンを供給する

IRF2はピロトーシスのためにGSDMD発現を転写レベルで誘導する

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