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ラクチル化が炎症収束を促進する

Lactylation drives resolution

Editors' Choice

Sci. Signal. 05 Nov 2019:
Vol. 12, Issue 606, eaba0502
DOI: 10.1126/scisignal.aba0502

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Zhang, Z. Tang, H. Huang, G. Zhou, C. Cui, Y. Weng, W. Liu, S. Kim, S. Lee, M. Perez-Neut, J. Ding, D. Czyz, R. Hu, Z. Ye, M. He, Y. G. Zheng, H. A. Shuman, L. Dai, B. Ren, R. G. Roeder, L. Becker, Y. Zhao, Metabolic regulation of gene expression by histone lactylation. Nature 574, 575-580 (2019).
Google Scholar

L. T. Izzo, K. E. Wellen, Histone lactylation links metabolism and gene regulation. Nature 574, 492-493 (2019).
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代謝物の乳酸に由来するヒストン修飾は、炎症の収束に必要な遺伝子の転写を促進する。

要約

ヒストンタンパク質の翻訳後修飾は、クロマチン構造と遺伝子発現を変化させる可能性がある。ヒストンのリン酸化、メチル化、ユビキチン化、アセチル化、シトルリン化、ADPリボシル化、プロピオニル化、ブチリル化、マロニル化、スクシニル化、グルタリル化、2-ヒドロキシイソブチリル化、クロトニル化、セロトニン化はすべて、記述されている。これらの修飾のいくつかは、代謝物に由来する基の共有結合によるものであることから、Zhangらは、ヒストンが、乳酸由来のラクチル基の共有結合であるラクチル化によって修飾されるかどうかを検討した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)‐タンデム質量分析(MS/MS)とウエスタンブロット解析により、著者らは、HeLa細胞とマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)において、ヒストンH3、H4、H2A、H2Bのリジン残基がラクチル化されることを示した。細胞株とBMDMにおいて、ラクチル化に細胞内乳酸量との相関が認められ、解糖系阻害剤によって、ヒストンラクチル化が減少した。In vitroでは、解糖を始動する炎症促進性刺激に曝露された初代培養マクロファージにおいて、酸化的リン酸化と脂肪酸酸化を促進する抗炎症性刺激に曝露されたマクロファージと比較して、ラクチル化ヒストンH3が多く含まれた。BMDMの炎症性刺激後、ラクチル化ヒストンの出現は、Arg1MMP9などの組織修復遺伝子の発現増加、および炎症性遺伝子TnfNos2Cxcl10の発現低下と同時期におきていた。また、ヒストンアセチル化と逆相関を示した。In vivoでは、腫瘍に由来するマクロファージにおいて、正常組織由来のマクロファージと比較して、より多くのラクチル化ヒストンと、Arg1およびVegfaの発現増加が認められた。乳酸脱水素酵素の欠損により、マクロファージにおけるヒストンラクチル化とArg1発現が低下したが、細胞外乳酸の補充によりこれらの作用は失われた。さらに、酵素活性測定およびノックアウト細胞株を用いた実験では、ヒストンアセチル化酵素p300がラクチル化を促進する可能性が示唆された。しかし、マクロファージにおいてどの酵素がラクチル化のwriter、reader、eraserとして働く可能性があるのかは、依然として不明である。総合すると、これらのデータによって、解糖系活性に依存し、マクロファージの抗炎症性遺伝子発現と相関する、これまで明らかにされていなかった翻訳後ヒストン修飾が説明されている(IzzoとWellenによる解説記事参照)。この特徴的な機構によって、脳または腫瘍などの高乳酸環境で認められる免疫抑制や、腸内細菌叢の異常がもたらす影響の一部が、解明される可能性がある。

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2019年11月5日号

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ラクチル化が炎症収束を促進する

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