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伸ばしすぎは肺に悪い
Too much stretching is bad for the lungs
Sci. Signal. 21 Jan 2020:
Vol. 13, Issue 615, eaba9167
DOI: 10.1126/scisignal.aba9167
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
H. Wu, Y. Yu, H. Huang, Y. Hu, S. Fu, Z. Wang, M. Shi, X. Zhao, J. Yuan, J. Li, X. Yang, E. Bin, D. Wei, H. Zhang, J. Zhang, C. Yang, T. Cai, H. Dai, J. Chen, N. Tang, Progressive pulmonary fibrosis is caused by elevated mechanical tension on alveolar stem cells. Cell 180, 107-121.e17 (2020).
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J. Sainz de Aja, C. F. Kim, May the (mechanical) force be with AT2. Cell 180, 20-22 (2020).
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肺胞幹細胞に過剰な機械的張力をかけるとTGF-βシグナル伝達と進行性肺線維症が誘発される。
要約
特発性肺線維症は、末梢から始まり、肺の中心部へ向かって内向きに進行し、最終的に呼吸不全に至る。肺の恒常性維持のために、あるいは肺の損傷後に、2型肺胞(AT2)とも呼ばれる肺胞幹細胞は、肺細胞とも呼ばれる、肺胞と毛細管の間のガス交換で機能するAT1細胞へと分化する。Wuらは(Sainz de Aja and Kimも参照)、AT2細胞でRho GTPアーゼファミリーのメンバーであるCDC42を欠損させたマウスは、特発性肺線維症を想起させるパターンで(末梢から肺の中心部へ)肺線維症を発症することを見出した。AT2細胞を進展させると、GTP結合型CDC42の存在量が増加したが、これは肺葉切除術による損傷に晒された対照マウスの肺でも増加していた。これらのマウスでは、AT2細胞からAT1細胞への分化も肺胞の再生も促進されていた。AT2細胞のCdc42を欠損させたマウスではこのような作用はみられず、末梢から肺の中心部へ進行する肺線維症を発症し、肺胞が肥大し、最終的に呼吸機能不全に至った。単一細胞トランスクリプトーム解析では、Cdc42欠損マウスにはAT1細胞亜集団とも他のAT2亜集団とも異なる遺伝子発現パターンを有するAT2細胞亜集団が存在することが示された。Cdc42欠損肺の線維化領域は、非線維化領域に比べて組織の硬直度が高かった。Cdc42欠損マウスで機械的張力を軽減すると、肺における繊維症の発症と肺胞の大きさと死亡率が減少した。伸長されたAT2細胞では、線維化を促進するトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達経路の活性が高まっていた。野生型マウスの肺を人為的に膨張させると、肺の中心部の肺胞に比べて末梢の肺胞のほうがより大きくなり、より大きな機械的圧力に晒され、TGF-βシグナル伝達が亢進されていた。TGF-β受容体をコードするTgfbr2をAT2細胞で遺伝子破壊すると、Cdc42欠損マウスにおける肺繊維症の発症と死亡率が減少した。このように、CDC42に依存したAT2細胞からAT1細胞への分化を欠損させると、肺胞の再生が損なわれ、AT2に機械的ストレスがかかり、TGF-βシグナル伝達が活性化されて進行性肺繊維症が引き起こされる。