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上皮損傷がアレルギー性炎症を引き起こす
Epithelial damage triggers allergic inflammation
Sci. Signal. 17 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 623, eabb6894
DOI: 10.1126/scisignal.abb6894
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
D. L. Wiesner, R. M. Merkhofer, C. Ober, G. C. Kujoth, M. Niu, N. P. Keller, J. E. Gern, R. A. Brockman-Schneider,M. D. Evans, D. J. Jackson, T. Warner, N. N. Jarjour, S. J. Esnault, M. B. Feldman, M. Freeman, H. Mou, J. M.Vyas, B. S. Klein, Club cell TRPV4 serves as a damage sensor driving lung allergic inflammation. Cell Host Microbe 10.1016/j.chom.2020.02.006 (2020).
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真菌プロテアーゼは肺上皮を損傷することでアレルギー性炎症を誘発する。
要約
カビ由来の吸入アレルゲンは喘息を引き起こすことがある。環境から栄養素を獲得するためにアスペルギルス(Aspergillus)属が分泌するアルカリプロテアーゼであるAlp1は、重症喘息と関連しており、肺上皮を損傷することで2型免疫応答を刺激すると提唱されている。Wiesnerらは、マウスで吸入された活性型アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)Asp1が、アレルギー性喘息に典型的な、免疫細胞の気管支浸潤と気道上皮の形態学的変化を誘発することを見出した。クラブ細胞と呼ばれる気管支上皮細胞のサブセットを除去したところ、これらの病状は軽減した。Asp1は、気道上皮への樹状細胞(DC)の動員を、損傷上皮細胞により放出される走化性因子であるC-Cモチーフケモカインリガンド2(CCL2)に依存する形で誘導した。肺へのDCの動員を抑制したとき、アレルギー性炎症を促進するヘルパーT細胞の集積は減少した。マウスと初代培養ヒト細胞の両方において、Alp1は肺上皮細胞間の接合部を損傷させた。マウスにおいて、カチオン性ペプチドであるポリアルギニンにより誘発された接合部の損傷は、肺内のT細胞数の増加を促進した。Alp1誘導性の免疫細胞の動員には、クラブ細胞内の、機械刺激感受性カチオンチャネルである一過性受容体電位バニロイド4(TRPV4)およびカルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンの両方が必要であった。著者らは、真菌アレルゲンに対するTRPV4発現および感作の亢進、ならびに喘息の増悪と関連する一塩基多型を、ヒトTRPV4において同定した。これらの所見から、真菌誘導性のアレルギー性喘息に働いていると考えられるモデル、すなわち真菌プロテアーゼが肺上皮を損傷して、アレルギー性炎症を誘導する免疫細胞を動員するというモデルが明らかとなった。