酸中毒細胞

Acid-addicted cells

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Dec 2020:
Vol. 13, Issue 660, eabf8517
DOI: 10.1126/scisignal.abf8517

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

Y. Funato, A. Yoshida, Y. Hirata, O. Hashizume, D. Yamazaki, H. Miki, The oncogenic PRL protein causes acid addiction of cells by stimulating lysosomal exocytosis. Dev. Cell 55, 387-397 (2020). Google Scholar

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1534580720306675

T. Hongu, T. Oskarsson, Addicted to acidic microenvironment. Dev. Cell 55, 381-382 (2020). Google Scholar

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1534580720308790

PRL3はTRPML依存性のリソソーム開口分泌を刺激することによって細胞に酸性pHへの耐性をもたせ、転移を促進させる。

要約

がんに伴う微小環境変化の1つが酸性化である。アシドーシス(酸血症)は大部分の正常細胞には有毒だが、腫瘍細胞は低pH条件に順応して盛んに増殖することさえあり、酸性pHはがんの進行を促進する(Hongu and Oskarssonのコメンタリー参照)。Funatoらは、Mg2+トランスポーターであるサイクリンM(CNNM)に結合して阻害することによってがんの進行と転移を促進する肝再生ホスファターゼ3(PRL3)を過剰発現するMDCK細胞が、酸性条件下(pH 6.5または7.0)で対照細胞よりも急速に増殖するだけでなく、正常な生理的条件下または塩基性条件下(pH 7.5以上)では増殖できないことを明らかにした。このような酸中毒細胞では、低pH、正常pH、高pH条件下において細胞内pHが対照細胞よりも高いpHで維持されており、リソソーム開口分泌の量が異常に多かった。リソソーム開口分泌を妨げると酸中毒の表現型は元に戻り、この結果は細胞がH+排出によってアシドーシスに対処するという考えに合致した。細胞内にMg2+が蓄積すると、活性酸素種(ROS)の産生が促進され、ROSはリソソーム局在型カチオンチャネルTRPMLを刺激しうる。PRL3を過剰発現する細胞でのリソソーム開口分泌の増加には、細胞内Ca2+量の増加を伴い、ROSとTRPMLの両方が必要であり、HEK293細胞でCNNM2およびCNNM4をノックアウトさせるとリソソーム開口分泌が刺激された。TRPML1をノックアウトさせると、培養マウスメラノーマ細胞においてPRL3により誘導されるリソソーム開口分泌が誘導されなくなり、in vivoでこれらの細胞のPRL3依存性転移が阻害された。線虫(Caenorhabditis elegans)で単一のPRLホモログを除去する、あるいはTRPMLホモログをノックダウンさせると、リソソームの細胞膜への輸送は遮断されたが、CNNMを欠損させるとリソソームの細胞膜への輸送は促進された。これらの知見は、PRL3がTRPML依存性のリソソーム開口分泌を刺激して細胞内pHを上昇させることによって酸耐性を高めるという考えに合致する。

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