H2O2で呼吸する

Respiring with H2O2

Editor's Choice

Sci. Signal. 12 Jan 2021:
Vol. 14, Issue 665, eabg4522
DOI: 10.1126/scisignal.abg4522

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

R. B. Chanin, M. G. Winter, L. Spiga, E. R. Hughes, W. Zhu, S. J. Taylor, A. Arenales, C. C. Gillis, L. Büttner, A. G.Jimenez, M. P. Smoot, R. L. Santos, S. E. Winter, Epithelial-derived reactive oxygen species enable AppBCX-mediated aerobic respiration of Escherichia coli during intestinal inflammation. Cell Host Microbe 28, 780-788.e5 (2020). Google Scholar

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33053375/

B. M. Miller, M. J. Liou, L. F. Zhang, H. Nguyen, Y. Litvak, E.-M. Schorr, K. K. Jang, C. R. Tiffany, B. P. Butler, A. J.Bäumler, Anaerobic respiration of NOX1-derived hydrogen peroxide licenses bacterial growth at the colonic surface. Cell Host Microbe 28, 789-797.e5 (2020). Google Scholar

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33301718/

S. M. Crowley, B. A. Vallance, Microbial respiration in the colon: Using H2O2 to catch your breath. Cell Host Microbe 28, 771-773 (2020). Google Scholar

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33301714/

腸管微生物は、正常状態と炎症状態のいずれでも宿主由来のH2O2を利用して呼吸する。

要約

正常状態下では、腸管腔は低酸素であり、嫌気性共生細菌の増殖を支持し、好気性病原菌や日和見病原菌の増殖を制限するが、H2O2などの、宿主から産生される抗菌性の活性酸素種(ROS)が比較的少ない。O2可用性の変化または炎症は、腸管ディスバイオシス(腸内菌共生バランス失調)を引き起こす(CrowleyとVallanceを参照)。ChaninらとMillerらは、マウス腸において、腸内細菌が、結腸細胞由来のH2O2を利用して、他の細菌に対する増殖優位性を獲得することを報告している。Chaninらは、正常状態下で腸内に存在するが、腸管が炎症を起こすと異常増殖する可能性がある、通性嫌気性菌の大腸菌(Escherichia coli)のヒト共生株が、腸管炎症時に好気的に呼吸するために、チトクロムbdオキシダーゼAppBCXを必要とすることを見出した。化学的に誘発された大腸炎において、腸内で野生型E. coliappC変異株を駆逐したが、腸管上皮のNADPHオキシダーゼNOX1(後にH2O2に変換されるROSを産生する)が欠損した場合には、そのような駆逐は起こらなかった。In vitroおよびin vivo実験の結果は、H2O2からAppC依存性呼吸に用いられるO2への変換をカタラーゼKatEおよびKatGが仲介することと一致し、この細菌が宿主由来のH2O2を好気性呼吸に利用する仕組みを示した。H2O2は、炎症を起こしていない腸管全体では概して少ないが、結腸の上皮表面に存在する(CrowleyとVallanceを参照)。Millerらは、III型分泌装置(T3SS)を用いて腸管上皮に付着するマウス病原体のシトロバクター・ローデンチウム(Citrobacter rodentium)が、宿主から産生されるH2O2を利用して好気性呼吸を促進することを見出した。機能するT3SSまたはCcpを欠損した変異菌は、マウス腸において野生型細胞に駆逐され、上皮細胞性酵素NOX1を欠損したマウスに定着できなかったが、食細胞性酵素NOX2を欠損したマウスには定着することができた。総合するとこれらの研究では、正常状態と炎症状態の両方において、微生物が上皮から産生されるH2O2を利用して増殖優位性を獲得する機構が示されている。

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2021年1月12日号

Editor's Choice

H2O2で呼吸する

Research Article

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