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アスパラギンでT細胞を活性化する
Activating T cells with asparagine
Sci. Signal. 02 Feb 2021:
Vol. 14, Issue 668, eabg8244
DOI: 10.1126/scisignal.abg8244
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org
J. Wu, G. Li, L. Li, D. Li, Z. Dong, P. Jiang, Asparagine enhances LCK signalling to potentiate CD8+ T-cell activation and anti-tumour responses. Nat. Cell Biol. 23, 75-86 (2021).
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J. L. Raynor, H. Chi, LCK senses asparagine for T cell activation. Nat. Cell Biol. 23, 7-8 (2021).
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細胞外アスパラギンは、Lckを刺激して、がん細胞や感染に対するT細胞応答を促進する。
要約
特定のアミノ酸の豊富さや不足は、代謝シグナル伝達経路を作動させる。Wuらは、非必須アミノ酸であるアスパラギンがT細胞機能に果たす役割を発見した(RaynorとChiも参照)。アスパラギン補充によって、in vitroでCD8+ T細胞の抗原依存性の活性化、増殖、分化が増強された。これらの効果は、アスパラギンの枯渇によって減弱した。一部の腫瘍細胞種はアスパラギンを分泌し、リンパ腫または肺がん細胞で馴化された培地で培養したナイーブCD8+ T細胞では、活性化の亢進が認められた。アスパラギン欠乏食を与えたマウスでは、CD25+CD8+ T細胞、活性化CD4+ T細胞、セントラルメモリー様CD4+およびCD8+ T細胞の数が減少した。リステリア菌(Listeria monocytogenes)初回感染時のアスパラギン可用性によって、次回感染時に炎症性サイトカインIFN-γおよびTNF-αを発現するCD8+ T細胞が増加した。細胞外アスパラギンは、トランスポーターSLC1A5を介して取り込まれ、T細胞活性化に不可欠なチロシンキナーゼであるLckに直接結合し、Lckの活性化を促進した。In vitroでアスパラギンによって前刺激したCD8+ T細胞を養子移植すると、メラノーマ細胞を注射したマウスにおいて腫瘍が縮小し、生存率が改善され、抗腫瘍効果の向上が認められた。さらに、これらの効果は、メラノーマ細胞注射の前にアスパラギンでマウスを前処理することによって再現された。したがって、細胞外アスパラギンは、Lckを刺激し、T細胞の活性化とがん細胞や感染に対する応答を促進する。