損傷を置き去りにする

Leaving the damage behind

Editor's Choice

Science Signaling 22 Jun 2021:
Vol. 14, Issue 688, eabj6781
DOI: 10.1126/scisignal.abj6781

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

H. Jiao, D. Jiang, X. Hu, W. Du, L. Ji, Y. Yang, X. Li, T. Sho, X. Wang, Y. Li, Y.-T. Wu, Y.-H. Wei, X. Hu, L. Yu, Mitocytosis, a migrasome-mediated mitochondrial quality-control process. Cell 184, 2896-2910.e13 (2021).
Google Scholar

D. R. Green, Mitochondrial quality control: Just walk away. Cell Metab. 33, 1069-1071 (2021).
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遊走細胞が欠陥のあるミトコンドリアを排出するための機構が同定されている。

要約

ミトコンドリアは、品質管理基準を満たさなくなると、さまざまな機構によって除去される。Jiaoらは、損傷したミトコンドリアが遊走細胞によって、ミグラソームと呼ばれる小胞様オルガネラ内に排出される機構をミトサイトーシス(mitocytosis)と名付け、その特性を明らかにした(Greenによる解説記事も参照)。ミグラソームは、遊走細胞の後部の細胞膜伸長部であるリトラクションファイバーに、テトラスパニン4および9(TSPAN4およびTSPAN9)に依存する形で形成される。細胞の動きとともにリトラクションファイバーが破断すると、ミグラソームは置き去りにされる。著者らは、L929細胞において、酸化的リン酸化脱共役剤CCCPでの処理または飢餓などによってミトコンドリアストレスを誘発すると、ミグラソームに損傷の徴候を示すミトコンドリアが存在するようになることを見出した。これらのミトコンドリアは主に、基質にもっとも近い細胞の層に位置した。ミトサイトーシスには、順行性モータータンパク質KIF5B、ミトコンドリア関連ミオシンアイソフォームMyosin19、ミトコンドリア分裂因子Drp1が必要であった。ミトサイトーシスを起こしたミトコンドリアは、ミトコンドリア膜電位(MMP)が低く、ROS濃度が高く、ミトコンドリアDNAの変異を有し、マイナス端方向に進む微小管モータータンパク質ダイニンとの結合が低下していた。TSPAN4の過剰発現またはダイニンのノックダウンによりミトサイトーシスを増加させると、L929細胞はCCCP処理後により速やかに回復することができ、ミトコンドリアの予備呼吸能が増加した。TSPAN9を欠損したマウスでは、骨髄由来マクロファージまたは好中球においてMMPが低下したが、肝細胞(マクロファージまたは好中球と異なり動かない)ではそのような低下は認められず、これらのマウスの脾臓の好中球は生存能が低下していた。以上の結果により、ミトサイトーシスが、遊走細胞に特異的な、欠陥ミトコンドリアを処理するための機構であると同定される。

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2021年6月22日号

Editor's Choice

損傷を置き去りにする

Research Article

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